研究課題/領域番号 |
15K03924
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
朝日 雅也 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (30315717)
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研究分担者 |
大橋 秀行 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (70433167)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 障害者就労 / 障害者雇用 / 多様な就労形態 / 社会支援 / 賃金補填 / 保護雇用 / 特例子会社 / ソーシャルファーム |
研究実績の概要 |
重度障害者の場合には、既存の就労形態での就労機会の獲得には限界があり、ソーシャルームや労働者協同組合、自治体独自の賃金補填による障害者事業団、あるいはNPO等を中核とした生産的活動などに期待が寄せられている。 しかしながら、これらの多様な就労の機会についての学術的な体系化は未着手で、それぞれの実践に依拠する概念整理に留まっていた。本研究では障害者の多様な就労形態や就労機会を、集中的な社会的支援に基づく「社会支援雇用モデル」として位置づけ、その実態と課題について理論的な整理を行い、今後の重度障害者の多様な就労形態への対応に向けた体系化を図ることを目的としている。 初年度は、研究代表者が所属する研究機関所在県を中心に、障害者就労分野の社会支援雇用と位置づけられる実践の分析結果を踏まえ、社会支援雇用モデルの検討を進めた。次年度では、引き続き関係する資料の収集分析を行うとともに、関係する実践者への聞き取りを実施した。特に、「超短時間労働」への取組み実践や、障害者雇用のための特例子会社を有する企業グループによる就労継続支援事業A型事業所の設置に代表される新たな雇用と福祉の融合実践等についても焦点をあて、障害者雇用・就労分野における社会支援雇用の概念整理を進めた。 さらに、社会支援雇用の実践を広く捉えていくため、初年度に抽出した自治体の各障害者計画における多様な就労形態に関する取組みについて整理・分析を行うとともに、就労継続支援事業A型に取組む民間企業の実態や、保護雇用、賃金補填に関する情報収集と分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は、障害者就労分野の社会支援雇用と位置づけられる実践者による組織を構成し、質問紙調査やインタビュー調査等の結果を踏まえ、社会支援雇用モデルの検討を進めることとしていたが、実践事例を特定していくための基礎的なデータ収集に時間を費やし、また、検討組織を構成する上での調整作業に手間取った。次年度では、社会支援雇用の定義の検討を進め、インタビュー調査の企画・設計を行ったものの、そこで用いる概念構成に時間を要したため、実施までにはまでは至らなかった。 自治体の障害者計画や障害福祉計画において社会支援雇用モデルと位置づけられる取り組みについての基礎資料の分析は進めているので、具体的なプロトタイプ化を図るための検討作業を迅速に行う。その作業を通じて、福祉分野における社会支援雇用の成立要件、地域福祉や障害者雇用の促進に与える影響、必要とされる社会的支援のあり方等についてまとめる。 社会支援雇用モデルの概念構築を図るとともに国内の先駆的な取り組みに対する質問紙調査及び訪問調査を実施する。その結果に基づき、社会支援雇用モデルのプロトタイプ化を図る。それらをもとに自治体の障害者計画や障害福祉計画において社会支援雇用モデルと位置づけられる取り組みについて整理・検討を行い、国や自治体による今後の社会支援雇用体系化のための方向性、課題を提示する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では障害者雇用・就労における社会支援雇用モデルを今後の障害者雇用・就労機会拡大の要と位置づけ、今後実施予定のヒアリング調査の結果も踏まえ、以下の点について体系化を図る。 すなわち、障害者雇用・就労分野における多様な働き方に関する先駆的取組みの実証的分析を通じたその類型化と社会支援雇用モデルとしてのプロトタイプの構築、社会支援雇用モデルと考えられる実践的な取り組みにおける障害者の就労状況を踏まえた今後の雇用創出の可能性についての検証、社会支援雇用モデルを展開する上での支援のあり方や、そのための条件整備、社会支援雇用モデルを構築する観点から、自治体の障害者福祉施策における障害者の雇用・就労機会創出に関する新規の取り組みについての政策的な展開の可能性の提示、である。 また、障害者雇用企業における社会支援雇用モデルの検証として、特例子会社を持つ企業グループによる障害者福祉サービスの活用ともいえる就労継続支援事業A型事業所の設置についての調査も行い、さらに社会支援雇用モデルの拡大の可能性についても検証を行う。 これらの研究を通じ、障害者雇用・就労分野の社会支援雇用の類型化を図り、学術的に定義しながらプロトタイプを構築するとともに、障害者雇用・就労分野の社会支援雇用モデルが、障害者の地域生活の実現に与える効果と影響を提示することとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
自治体における聞き取り調査について、社会支援雇用の概念の構成を明確にした上で、今後の取組みや、障害者計画・障害福祉計画の実施に向けた観点から実施することとし、最終年度での実施に至ったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
先駆的事例を行う自治体に対し、今後の取組みへの展望を含めた上で、聞き取り調査を実施する予定である(全国5ヵ所程度)。また、障害者雇用のための特例子会社と就労継続支援事業A型事業所との関連について、事業所への聞き取り調査を実施する(全国5カ所程度)。これらの聞き取り調査の中で、社会的支援の概念についても実践現場の視点から検証することから、調査に係る経費に焦点化した使用計画としている。
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