研究実績の概要 |
平成28年度は,以下の取り組みを行った.(1)受診勧奨者の要因の検討:申請書に既述したように,精神的不調時に受診態度を促進する要因には,受診勧奨を行う人が信頼できるかどうかが影響をする.過去の研究では,親と友人があげられた.平成28年度では,親について,大学生を対象に,親子関係の特徴と親子のコミュニケーション・スタイルの関連関係を検討した.その結果,親からの圧力的なコミュニケーションは子どもの愛着志向を歪め,ストレス脆弱性を高めることが示唆された.一方,友人についての検討では,その関係性がコミュニケーションを規定することがわかった.(2)精神的不調時での受診勧奨の内容(助言内容)も受診態度に大きく影響する.その際の因果関係のヒントを得るため,平成28年度ではストレスに対する支援についての一般的な知見を探求した.具体的には,スーパーバイズ経験が介護支援専門員の職業性ストレスに及ぼす影響について検討し,ストレス時に助言した場合の受け手への影響を検討した.検討の結果,職務に対するストレスが高い場合,介護支援専門員は,教育的・管理的なスーパーバイズを経験していたが,離職率の抑制に効果的な取り組みは,支持的スーパーバイズであった.すなわち,ストレス時への助言は事態への対処に関わる助言が多く生じるが,助言相手に支持的なものでなければ相手との関係性に影響する可能性があることが推察された.以上の結果から,精神的不調時での肯定的な受診態度の形成には,適切なコミュニケーションで形成された親・友人など信頼できる存在が,支持的な態度を示しながら適切な助言を行うことが重要である可能性が考えられた.また過去の研究をふまえ,助言には精神的不調の解決への期待を抱かせるものであり,かつ医療へのスティグマや不信を抑制する取り組みも必要になる.
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