研究最終年度である平成29年度には,次の2つの研究課題に取り組んだ。 第1に,若者自身が罹患した際のTreatment Gapに影響する要因を検討した。若年層の精神科医療の受診回避に関しては,先行研究も蓄積されており,日本の特に大学生を対象とした場合には,「低い利用ニーズ」や「スティグマ」,「サービスが役立たない」という信念,の関連が指摘された。29年度に実施した調査の結果,うつ病罹患の可能性がある場合,精神科医療のサービスを利用する方が効果的と理解しているものの,利用の想定は,友人や家族,学生相談室などとくらべ低いことがわかった。ただし,信頼する人からの受診勧奨には58.8%の人が応じ,応じないとした人は5.9%にすぎなかった。理由としては,「治療をして改善したいから」「この状態を抜け出したいと思うから」といった項目評定値が高く,医療機関での専門的サービスへの期待感が強く現れていた。また,「信頼する人から受診するよう勧められた」「周囲に心配をかけたくない」といった周囲への配慮もサービス期待感についで高かった。一方,受診勧奨に応じない人には,「精神科病院はよくわからないから」「精神科病院に行っても自分が理解されると思えないから」というように,医療サービスの理解不足や不信が認められた。 第2に,友人が罹患した際のTreatment Gapに影響する要因を検討した。精神的には危機的な友人への受診勧奨を行うか否かについては29.4%が「勧奨を実施」すると答え,23.5%が「しない」,後47.1%は態度を保留した。理由として評定値が高い項目は,「病院に行くのは本人が決めることだから」「まずは身近な人への相談を勧める」というように,友人の受診という事態に責任を意識しての内容であった。本研究では,こうした項目を精選して,Treatment Gap尺度試行版を作成した。
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