最終年度もこれまで同様に国内外および学際的視点からの社会関係資本論(ソーシャル・キャピタル)をめぐる動向や評価について分析検討を行った。計31件の文献を収集し、今日の社会関係資本論の研究傾向を分析しつつ、これらを社会的孤立に照らし合わせ考察する作業を行った。アンケート調査についても、前年度から行っている高知県内1市1町および福岡県内2市からなる地域および対象者12名への支援、対象者へのアクションリサーチを行った。また、2018年の4月から開始した協力者である4市町の社会福祉協議会コーディネーター、民生児童委員、福祉委員(計72名)とは、それぞれが担当する地域で開催される民生委員会等を利用し、本研究に関するミーティングを計4回開催した。 その他、分析につながる本年度の主な活動については、以下のとおりである(前年度からの実施を継続している)。 (1)地域への支援:対象地域に対し、社会福祉協議会コーディネーターが毎月定期的に実施している「高齢者サロン」、「地区会」等にて、対象者(孤立者)11名への見守り活動や日常のつき合い方に対する協議を行った。 (2)対象者への支援:研究協力者と協働して、対象者への声かけ(見守り)、「高齢者サロン」への誘い等を行い、相談・話し相手としての活動を通じて支援を行った。 (3)アクションリサーチ:対象者の意識と生活の変化を把握することを目的に、研究協力者とともに対象者12名に対し、それぞれ年間2回の非構造化面接を行った。 以上の調査活動の総合的な結果、社会関係資本が決して高くはない関係性、いわゆる「弱いつながり」によってもたらされる「居心地の良さ」の指標を示すデータを導き出すことができた。ただし、指標にもとづいた具体的支援の有効性を実証するためには、実践による分析が必要なことも明らかとなった。これについては、次段階での調査研究となる。
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