最終年度には研究計画の中心となる「若者生活実態調査」を北海道庁との協力のもと実施することができた。調査は「学生調査」「勤労者調査」「ハローワーク利用者調査」の3つの調査からなり、現在、統計的な分析を開始するデータクリーニングを終えた状況である。今後、この調査の基本的な調査結果報告を北海道庁のホームページを通じて公表し、その後、詳細な調査分析として論文の発表を行う予定である。 研究期間全体の主な成果は次のとおりである。1.研究視角である社会的文脈を組み込んだ貧困分析のひとつとして、ジェンダー視点を組み込んだインタビュー調査を実施できた(書籍論文として発表済み)。2.その結果も踏まえてこれまでの研究成果から子どもの貧困を分析する視点として「子どもの貧困の経験」を理論化する試みを行った(学術誌論文として発表済み)。3.さらにその分析視点を組み込んで、「若者生活実態調査」を実施した(現在、調査報告書作成の準備中)。研究計画で予定していた調査(「A調査:若者期における生活実態調査」「B調査:移行期における回顧的インタビュー調査」)についてはおおむね実施することができた。このことにより、「貧困の世代的再生産」の実態を「子どもの経験」と「ライフコース」の観点から具体的に把握することができた。 研究全体を通じて、これまでの子ども・若者貧困に関する調査研究と比較して、より具体的な生活実態・家族の持つ資源や資本のあり方・ジェンダー規範の影響・社会保障制度や社会福祉サービスとライフコースとの関連を捉えることができた。また、その生活をどのような経験として受け止めているか、そのことが個々人の人生の選択とどのように関連しているかについて明らかにすることができた。総じて研究の目的であった貧困の世代的再生産における当事者理解をすすめることに一定の貢献ができたのではないかと考えられる。
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