研究課題/領域番号 |
15K03942
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
木下 武徳 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (20382468)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 公的扶助 / 不服申立 |
研究実績の概要 |
アメリカにおける公的扶助制度の動向については、「アメリカにおける生活困窮者対策の動向」(『社会福祉研究』鉄道弘済会、第123号、2015年7月1日、pp.98-104.)にて、連邦政府による低所得対策、つまりミーンズテストのある福祉プログラムを取り上げ、連邦支出等の変化等から近年の公的扶助政策に関する動向について分析を行った。 アメリカの公的扶助(貧困家庭一時扶助)における調査研究のなかでは、コロンビア大学准教授のレンズ氏(Lens 2007;2009)は、審査請求しない人でも審査請求に関する制度を知り、行政の決定が誤っていると考えている傾向にあることが示されている。その上で、審査請求しない人は、行政不信により審査請求が有効ではないと考えている。つまり、審査請求をしても何も変わらないと期待をしていない傾向にある。また、審査請求する人は社会的ネットワークがあり、そのなかで審査請求に関するアドバイスや支援が受けられている傾向にあるという。 日本における生活保護世帯への不服申し立てに関する調査については、2015年度中に北海道の生活保護支援団体が生活保護利用者への調査をすることになり、その調査に加わる形で審査請求の調査項目も含めて実施することができた。615の調査票を回収し、まだ集計途中であるが、途中経過の212の結果を述べると、提訴した人(54人、25%)では、「生活保護制度が悪くなるのを防ぎたい」94.4%、「生活が苦しくなった」77.8%、「基準引き下げの理由に納得がいかない」77.8%と続いた。提訴しなかった人(158人:75%)では、「基準引き下げの根拠がよく分からない」33.5%、「不服申し立てをする勇気がない」22.2%、「一緒に不服申立する知人、友人がいなかった」12.0%と続いた。まだ集計途中であるが、今後、この集計と分析を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
子どもの出産、家族の不幸、大学の異動等が続いたため、当初予定の研究が進められなかった点が多い。海外の公的扶助における審査請求の実態に関する調査、特に、コロンビア大学のレンズ准教授への訪問とアメリカでの不服申立についての現地調査等ができなかった。 一方、日本における生活保護利用者に対する質問紙調査については、急ピッチで進め、調査票の作成と実施、集計作業まではたどり着くことができた。今回の調査対象者のなかから、インタビュー調査の協力者を打診し、さらに詳しく分析できるように調査研究に取組んでいきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度に実施できなかったこの研究の第一人者であるアメリカのレンズ准教授への訪問とアメリカでの不服申立制度に関するデータ収集を行う予定である。 また、先述の通り、日本における質問紙を用いた調査を実施したが、その集計作業と調査結果の分析等を行う。このことについては、生活保護の支援団体等とも協力を密にとって、研究倫理上の問題も生じないように注意しながら、進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
私事であるが、家族のことや大学の異動等のために、当初予定していたアメリカへの現地調査ができなかったこと、当初アメリカ等の現地調査で活用するために購入予定をしていたパソコン機器の購入をしていなかったことが大きな理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
パソコンの購入とアメリカへの現地調査は2016年度に行うことで使用する予定である。また北海道から埼玉に所属する研究機関が移ったため、日本国内でのインタビュー調査を行うにあたって、北海道等へのやや高額の交通費が発生することになる。そのため、2016年度分と合わせても支出は可能であると考えている。
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