本年度は本研究の最終年であり、その研究成果としては、第一に、2015年の北海道調査では、生活保護基準裁判を提訴した原告で不服申立をした理由をみると、最も多いものから生活保護制度の悪化を防止したいが69.4%、基準引下げに納得できないからが63.6%であった。原告にならなかった人で不服申立しない理由は引き下げの根拠がわからないが46.9%、不服申立の勇気がないが27.0%などとなっていた。そして不服申立をするために必要なことで最も多かったのが生活保護の偏見をなくすで65.4%であった。 第二に、カリフォルニア州やニューヨーク州では、年間数万件に及ぶ審査請求が行われている。また、裁決をするのは弁護士資格を持つ職員であり、現金給付も延長が認められているなど充実している。一方、連邦政府でも法的支援法人を設置し、全米各地の法的支援団体に資金を配分し、弁護士等が公的扶助利用者を含む低所得者法的支援に取り組んでいた。 第三に、スウェーデンでは、オンブズマン制度が行政の不服申立に関わって大きな影響力があり、スウェーデンでは審査請求とオンブズマン制度の取り組みを調査した。市民は行政の問題を知った日から3週間以内に当該自治体に対して審査請求を行う。それで行政判断が修正されない場合、「行政裁判所」に申し立てる。もう一つは、国レベルの「議会オンブズマン」があり、国および地方自治体レベルの公務員の業務に関する苦情を受け付け、調査を行っている。一方、自治体レベルでは、例えばA市では「児童オンブズマン」「障害者オンブズマン」「高齢者オンブズマン」が設置されている。これらは当事者の権利が実現されるように法律や政策策定の過程で意見を述べたり、行政手続きの改善に取り組む。こうした機能は日本の審査請求やオンブズマン制度にはなく、政策実現の面でも権利保障を図っていることがわかった。
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