本年度の研究成果は以下の通りである。全国7地方(北海道・東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州)の中から各2か所以上全27か所の都道府県・政令指定都市を訪問し、地方精神保健福祉審議会への当事者委員の参画がある所の参画の経緯と当事者委員に対する評価、また、当事者委員の参画がない場合はその理由と参画に向けたプロセスを中心に聞き取り調査を実施した。 研究期間全体を通じて、全国47都道府県・政令指定都市(70.1%)の行政担当者を訪問し(一部文書による回答)直接行政担当者から意見を得た結果、当事者委員の参画があるところの参画の経緯は「全庁に渡る当事者委員参画の意向」、「担当課内で精神保健福祉施策推進のために当事者を必要と認識」、「多様な市民参加の点で当事者参画は当然」であった。また、当事者委員の「当事者としての体験」、「当事者としての切実な声」、「当事者の視点からの意見表明」、「行政機関の不足を補う」、「施策策定の一部を担う役割」が評価されていた。一方、当事者委員の参画がない理由を「当事者委員参画の必然性の認識の有無」と「意見表明の機会の有無」の2軸から、①審議会以外の会議や部会への参画、②当事者の人材把握の問題、③家族委員で代替、④検討未満の4種に分類できた。 今後、当事者委員が参画するためのプロセスとしては、①行政機関の動きとして、担当課内で当事者委員参画の理由付け、当事者委員を担える人材に関する情報収集、特定テーマの話あいにオブザーバーとして参加、続いて関連会議委員や、地方精神保健福祉審議会部会委員、本会議委員へとステップアップ、また、②当事者側の動きとして当事者団体の存在のアピール、ピアサポーター養成からの人材発掘、③公募制が考えられる。 これらの結果から本研究の目的であった審議会への当事者委員の参画拡大に向けた具体的方略の一端を明らかにすることができたと考えられる。
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