研究実績の概要 |
(1)平成27~29年度の研究結果から抽出された地域構造と高齢化の課題を踏まえ、研究内容を構造的に比較検証する為に、調査内容は過去の内容をベースとして用い、健康と地域機能に関する生活課題の要因分析について調査を実施。従属変数を主観的QOLとして、独立変数を基本属性、身体状況、社会的関係、地域意識として分析。平成28~29年度に実施した「農村部」Lagi,Binh Thuan Provinceでの分析結果を深化させるために、65歳以上50名を対象に質問紙調査を実施し、「農村部」の社会的統合の構造を分析。また、人口流出がベトナム国内のみならず近隣国に及んでいることからカンボジアに移り住むベトナム人高齢者の実態について訪問調査を実施。人口構造は、ベトナム統計年鑑、人口・住宅サンセスを用いて、平均人口、人口移動(流出率、流入率)、就学状況(就学検討率、不就学就業率を含む)、経済状況、貧困率を算出し分析。 (2)人口構造から捉えた都市部と農村部の格差の背景には、就学(学歴)と職業との相関による学歴階層格差があり、職業階層は収入に直結し、学齢期の就学検討は、高齢期の生活に繋がる検討すべき課題であった。また、人口構造と高齢者の関係の背景要因として、第1に人口構造を含めた年金制度の未整備を含め、経済状態が脆弱であること、第2に他の地域からの流入者による地域とのつながりが希薄なこと、第3に核家族化や一人暮らしによって家族内の機能に期待できない状況である。現代ベトナムにおいて農村部高齢者を取り巻く課題として、人口構造が引き起こす地域基盤の相互性が高齢化の進展に伴う身体機能、及び認知機能の低下による生活障害など、新たな時代を迎えることが予測され、ベトナム社会の地域システムの検討が示唆された。その結果を『日本老年社会科学会』『日本社会福祉学会』で研究発表、及び論文として『研究紀要』に掲載。
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