介護職員は、2012年度から喀痰吸引と経管栄養という医行為を、一定の条件下で「医療的ケア」として行えるようになった。医療的ケアを必要とする者は確実に増加している一方で、医療的ケア導入による不安・困惑が、介護職員、学生、教員の間にいまだに存在している。本研究では、福祉現場の実態を踏まえたうえで、介護福祉士養成における医療的ケアの教育を検討することを目的とした。 平成29年度は、医療的ケアを受ける利用者を対象に、インタビューを行った。また、在宅で医療的ケアを実施している介護職員にもインタビューを行った。 在宅で喀痰吸引や経管栄養を受けている利用者からは、介護職員の技術の格差や、介護職員の医療的ケアの範囲拡大を望む要望など、苦痛や困難を感じている点や要望を把握することができた。介護職員へのインタビューからは、医師や訪問看護師との連携上の困難や、家族の要望に応えることの難しさと葛藤、ヒヤリ・ハットやアクシデントの危険性について把握した。さらに、医療職との連携における工夫、利用者・家族の要望に応えていく対応、生活のなかでの医療的ケアの工夫や配慮点などを聞くことができた。 医療的ケアの教育においては、安全な技術の修得を図ること、利用者の意向に沿った技術を提供すること、生活支援としての医療的ケアを工夫していくこと、医療的ケアの範囲を守ることなどを教授することが重要と考えられた。これらの成果は、2つの学会で発表した。
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