研究課題/領域番号 |
15K03956
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
須田 仁 聖徳大学, 心理・福祉学部, 准教授 (40369400)
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研究分担者 |
北川 慶子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (00128977)
西 智子 日本女子大学, 家政学部, 教授 (70383445)
川口 一美 聖徳大学, 心理・福祉学部, 准教授 (00352675)
小原 貴恵子 聖徳大学短期大学部, 保育科, 講師 (40736641)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DWAT / 災害ソーシャルワーク |
研究実績の概要 |
28年度では、4月に起きた熊本地震において被災地支援を行なった社会福祉法人福祉楽団の職員に対するインタビューを行なった。派遣された職員によると、被災した高齢者福祉施設では発災直後は混乱しており、ほとんど福祉避難所としての機能を果たしていないことがわかった。発災直後に被災施設へのアセスメントと地域診断の必要性を把握することができた。 また千葉県社会福祉士会災害対策委員会のメンバーに対して、インタビューを行なった。千葉県社会福祉士会では災害対策委員会を立ち上げ、熊本地震等に会員を派遣している。そこでの活動の様子や課題などを伺った。 熊本県が創設したDCATは実質機能しなかったことや福祉避難所が機能せず、介護保険事業者等が孤軍奮闘していたことがわかった。また災害時のソーシャルワークやチームの役割など多岐にわたっており、チームの機能について議論が続いていることがわかった。特にDWATがどのように派遣され、いつ撤退するのか(引き上げるか)の判断ができていないことが今後の検討課題であることが明らかとなった。 さらに山形県に設置されたDCATの状況と研修プログラムを調査し、今後求められる福祉専門職の課題が明らかになった。インタビューの内容としては平成28年11月4日に開催された山形県災害派遣福祉チーム員養成基礎研修会の研修内容や災害派遣福祉チームの概要であった。現在、山形県では介護職を中心とする山形県災害派遣福祉チームを設立し、今回初めてチーム員養成基礎研修会を実施していた。研修内容としては「被災者ニーズとチーム活動」「活動手順と避難所における他職種連携」「チーム員の活動」「図上訓練」といった実践的な内容であった。課題としては共通フォーマットとしてマニュアルを共通化、研修も共通化していざ派遣となったとしても支援に違いや混乱をきたさないようにする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のDWATの設置状況を確認することができている。現在、全国のDWAT(もしくはDCAT)の設置状況は都道府県ごとに14道府県で設置済み、7都県で検討中もしくは準備段階であることがわかった。先行事例としては岩手県の災害派遣福祉チームがある。熊本地震時にも派遣され実績がある。熊本県にも災害派遣福祉チームが設置されていたが、派遣予定の職員が被災し、発災後しばらくしてからの派遣となり、発災直後の支援には限界があることがわかった。 上記からDWAT(災害時福祉職派遣チーム)の初期加入の必要性を仮説として提示できた。国の防災会議や福祉系もしくは防災関連の学会、実務者の間で未だに福祉職の役割が不明瞭である状況は依然として続いている。現在までに避難所への福祉職の支援、避難所を退所し仮設住宅で暮らす人々の生活支援の重要性は明らかになっている。 しかしながら被災した福祉施設や福祉サービス提供事業者、特に事業規模が小さい地域密着型サービス等が被災した場合、事業継続が困難になり利用者すら支援することができない。そこで、事業を継続するためにもDWATが外部からの支援として必要となることが明らかになった。 そこからDWATを養成する研修プログラムの大まかな枠組みを組み立てることができている。研修内容としては「被災者ニーズとチーム活動」「活動手順と避難所における他職種連携」「チーム員の活動」「図上訓練」といったこれまで行われてきた研修に加えて、発災直後に被災した施設の「アセスメント(サービス供給する能力がどのくらいあるのか)」と現存する社会資源はどのくらいあるのかといった「地域診断」、被災者がどのくらいいるのかの「ニーズ調査」を行う講義と模擬演習が必要である。 以上から実践的プログラム策定までほぼ順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究としては4つのことを実施したいと考えている。 一つ目は鳥取地震、北海道十勝での大雨災害において、地域密着型サービスでの実態調査を実施したいと考えている。これまでにわかったDWAT初期介入の必要性を改めて明らかにするために、他の被災した地域でのフィールド調査を実施したいと考えている。 二つ目は海外の被災地支援の方法を調査する。 三つ目はDWAT養成プログラムを作成する。ポイントとしては既存のソーシャルワーカーの援助技術を見直し、被災地支援を踏まえたプログラムを作成する。 最後にDWAT研修プログラムを千葉県社会福祉士会の協力のもとに実施し、より実践的なDWAT養成プログラムになるよう精緻化したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度研究においては、インタビューを行った際のテープ起こしなどの費用を積算していたが、使わずにテープ起こしなどを行ったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度であることから、最終的な報告書の作成などの印刷費用等に利用したいと考えている。
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