最終年度では動画作成を行った。研究開始前は冊子で子育て支援に関する情報提供を行う予定であったが、最近は子育て支援に関して動画による情報提供が一般化し始めていることがあり、動画作成を試みた。内容は、当事者夫婦や支援者との検討の結果、妊娠期に関する情報提供を試作することとなった。当事者が登場することに意味があるのではないかという意見が出て、急きょ台本を読みやすい形にし、当事者夫婦に出演してもらった。専門家として助産師を加えた。動画作成に関しては、一般の子育て支援動画作成を手掛けている業者に依頼した。知的障害者への情報提供の専門家と保健師である大学教員のアドバイスも受けて、随時当事者夫婦に意見を求め、その満足度も確認しながら試作を繰り返し、完成した。 動画は二部構成とし、一部には妊娠前期として①妊娠を確かめる方法、②避妊について、③セックスの同意について、④相談先についてを掲載し、二部には妊娠後期として①健診について、②妊娠後の生活について、③男性のできること、④出産の準備、⑤出産に際して、といった内容とした。 同時に二組の夫婦計4名に、自分の人生について語ってもらい、写真や子育ての様子などを入れた動画も作成した。4名はそれぞれに事情を抱えて児童養護施設での生活を経験し、その後支援者の支援を受けてパートナー・子どもとの生活を形成しており、その生きざまを知ることは知的障害のある人と支援の可能性を示すものである。 本研究において就業・生活支援センターに対するアンケート調査、国際シンポジウム・ワークショップ、インタビュー調査を実施してきたが、相模原事件や旧優生保護法補償訴訟などと時期が重なり、障害者の性・家族形成に焦点が当たった。今年は障害者権利条約に関し国連から総括所見を受ける年でもあり、さらに広く課題提起していくとともに、本研究の成果を用いて実践現場での変革に寄与していきたい。
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