研究課題/領域番号 |
15K03961
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
金 成垣 東京経済大学, 経済学部, 准教授 (20451875)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 後発福祉国家 / 家族政策 / 雇用保障政策 / 社会保障政策 / 東アジア |
研究実績の概要 |
本研究では,これまで東アジア諸国・地域の雇用保障・社会保障政策に関する研究から得られた「後発福祉国家論」という視点にもとづいて,①日本,中国,韓国における家族政策の歴史と現状,そしてその雇用保障・社会保障政策との関連性についての国際比較分析を行い,これにより②後発福祉国家論のさらなる理論的発展を試みるとともに,③各国の制度改革の方向性および東アジア域内・外での人の移動を視野に入れた共通政策の可能性を探ることを目的とする。 本年度においては,まず,歴史・現状分析のために,日本,中国,韓国の家族政策を中心とした福祉国家の歴史的展開過程と現状に関する資料収集・分析を行った。 次に,理論研究のために,文献研究や研究会での報告を中心に,これまでの雇用保障・社会保障政策を中心とした分析に家族政策を捉える視点を加えることによって,後発福祉国家論の理論的洗練を図った。 以上の歴史・現状分析および理論研究を行うにあたり,今年度に出版した研究書(金成垣『福祉国家の日韓比較――「後発国」における雇用保障・社会保障』明石書店,2016年2月)と論文(金成垣「福祉レジーム論からみた東アジア」『海外社会保障』No.193,2016年3月)をベースに,家族政策に関する分析を,これまでの雇用保障・社会保障の分析と同様の水準まで引き上げることを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,現在までおおむね順調に進行している。研究課題の順調な進行において,上記の研究書の出版(金成垣『福祉国家の日韓比較――「後発国」における雇用保障・社会保障』明石書店,2016年2月出版)が大きく貢献している。これまで行ってきた雇用保障・社会保障に関する研究成果を1つの研究書としてまとめることができ,それをふまえたうえで,家族政策の歴史と現状,そしてその雇用保障・社会保障政策との関連性に関する調査・分析が容易になったからでである。 ただし,家族政策は,雇用保障・社会保障政策に比べて,関連する資料や研究成果が不足している。そのため,家族政策に関する分析を,これまでの雇用保障・社会保障の分析と同様の水準まで引き上げていくためには,各国の関連専門家とのより緊密な協力体制が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,今年度の到達点をふまえて研究を遂行していく予定である。具体的には以下の通りである。 まず,中国と韓国について前年度と同様に資料収集と現地調査をすすめていく。特に韓国では平成28年に国会議員の総選挙があり,その際,保育や育児関係の家族政策についての議論が活発になる可能性が高いため,選挙を前後とした政策変化の状況をフォローする必要がある。これに関しては,これまですでに研究交流をしてきた研究者ネットワークを最大限活用していく。また,各国のデータ収集・分析の成果を中間報告書として印刷する予定である。 次に,今年度に引き続き,後発福祉国家論に関する理論研究を追究していく。特に文献研究を通じて得られた理論的成果について,学会や研究会などで中間報告や討論を行うことによって(日本の社会政策学会,韓国社会政策学会,日中韓社会保障国際論壇など),従来の比較福祉国家論の限界を克服する新しい理論構築の可能性を探っていく。
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