研究課題/領域番号 |
15K03962
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
菊池 義昭 淑徳大学, その他部局等, その他 (50258927)
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研究分担者 |
南雲 勇多 東日本国際大学, 経済経営学部, 特任講師 (00781543)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 岡山孤児院 / 石井十次 / 東北三県凶作 / 音楽幻燈隊 / 賛助員 / 児童愛護デー |
研究実績の概要 |
本年度の研究経過と成果は、次のようになる。 5月11日、12日の社会事業史学会第47回大会で「岡山孤児院の音楽幻燈(活動写真)隊の北海道内での活動実態―1900(明治33)年8月から9月の慈善会の内容を中心に―」という研究報告を実施した。8月24日から29日まで石井十次資料館で資料調査等を実施した。9月21日、22日の日本社会福祉学会第67回秋季大会で「大分県内での岡山孤児院の音楽幻燈(活動写真)隊の活動実態-1900(明治33)年2月の中津町での活動内容を中心に-」という研究報告を実施した。10月17日から19日まで倉敷中央病院、大原美術館等で聞き取り調査等を実施した。 また、下記のような研究論文をまとめた。 (1)「岡山孤児院の音楽幻燈(活動写真)隊の北海道内での活動実態-1900(明治33)年8月の函館区と札幌区での活動内容を中心に-」『社会事業史学会第47回大会報告要旨・論文集』(189頁~204頁)、(2)「岡山孤児院の音楽幻燈(活動写真)隊の北海道内の巡回運動の実態-1900(明治33)年9月からと1903(同36)年8月からの活動を中心に-」『石井十次資料館研究紀要』第20号(116頁~210頁)、(3)菊池義昭、中嶌洋「岡山孤児院の賛助員の全国的な支援ネットワークスステムの構築展開過程の実態とその歴史的役割-研究課題と時期区分および分析課題-」『同』第20号(80頁~115頁)、(4)菊池義昭、中嶌洋「岡山孤児院の賛助員の全国的な支援ネットワークシステムの構築-1898年5月の着手から1899年までを中心に-」『東北社会福祉史研究』第38号(1頁~39頁)、(5)高松誠、菊池義昭「昭和戦前期の岩手県における乳幼児愛護週間の実践とその史的展開」『同』第38号(82頁~97頁)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、岡山孤児院の2つの災害での貧孤児収容と同院での個別支援の歴史的役割を解明してきたが、このうち、濃尾大震災での震災孤児の収容においては、震災孤児の個々の生活状況や彼らを収容した震災孤児院の活動を明らかにした。東北三県凶作での貧孤児収容においては、個々の貧孤児(東北児)への岡山孤児院の養護実践を解明し、特に、茶臼原農場学校での青年院児(東北児を含む)への農業教育と自立支援の展開過程を明らかにした。その結果、同院の養護実践の到達点が、青年院児が農業で自活し結婚して家族を持つまでのライフステージを支援する実践であったことを立証した。そして、このような養護実践は、青年期(結婚)までの院児(東北児を含む)の成長と発達を保障する実践の先駆けになると確認できた。 また、このような養護実践を財政的に支えるため、音楽幻燈(活動写真)隊が全国各地を巡回して音楽幻燈会(慈善会)を開催し寄付金募集活動を実施し、並行して賛助員募集活動にも取り組んだため、これらの活動の解明も実施した。その結果、この2つの活動を通して全国的な支援ネットワークが成立して行くことを確認した。さらに、同隊が全国各地での開催した音楽幻燈会(慈善会)の内容を解明する中で、この活動が、院児の成長と発達を保障するような養護実践を一般民衆に啓蒙する活動で、この啓蒙活動に中に子どもの権利に関する萌芽が内在していると仮定できた。このため、その実態をより深く解明し、分析することが必要であると認識した。 さらに、音楽幻燈(活動写真)隊による一般民衆への啓蒙活動は、明治期で終了するため、これを受け継ぐ大正期からの活動として、児童愛護デーという全国的な運動が存在することを突き止め、大正期から昭和期の児童愛護デーの全国的な運動の実態を解明し、子どもの権利またはその保障に関する萌芽の内容の一端を分析した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、全国各地で開催した個々の音楽幻燈会(慈善会)の内容を解明し、この活動内容が、院児の成長と発達を保障するような養護実践を一般民衆に啓蒙する活動になっていたか否かをより深く分析し、この啓蒙活動に中に子どもの権利に関する萌芽が内在していたかを見極めることにする。 また、賛助員募集活動を通して、同院の全国的な支援ネットワークシステムがどのように構築され、やはり一般民衆への啓蒙にどのような効果があったかを分析することにする。 さらに、岡山孤児院の音楽幻燈(活動写真)隊による一般民衆への啓蒙活動を受け継ぐ、大正期から昭和期の児童愛護デーの全国的な運動が、どのように展開し、その啓蒙活動を通して子どもの権利またはその保障に関する萌芽の内容が、どう深化もしくは変質していくのかを見定めて行くことにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の若干の遅れと新たなる課題が生じたため、次のような研究に取り組むことにする。①全国各地で開催した個々の音楽幻燈会(慈善会)の内容の解明と、院児の成長と発達を保障するような養護実践を一般民衆に啓蒙した活動の分析や、②賛助員募集活動を通しての、全国的な支援ネットワークシステム構築とその効果の分析を実施する。 また、③大正期から昭和期の児童愛護デーの全国的な運動の展開と、その啓蒙活動を通して子どもの権利またはその保障に関する萌芽の内容の分析も実施する。
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