神奈川県で複数年度実施されてきた多文化ソーシャルワーク講座の検討委員と共に、これまでの講座企画・実施を振り返る報告書の作成を行ったが、コロナウイルスの感染拡大の影響により年度内に完成できなかったため、2020年度中に完成予定である。また、本科研費での検討を反映させた研修プログラムに基づく実践講座を、別途補助金を得て実現した。 当助成事業に基づくこれまでの研究を踏まえ執筆し2018年度出版書籍に収録された論稿で定義を行った「多文化コミュニティソーシャルワーク」概念を踏まえ、当助成事業とは別の論稿において今年度さらに精緻化を試み、「地域・エスニック・多文化といった複層的なコミュニティを基盤に、一人ひとりを取り巻く環境を重視した支援を行うものである。その際に、多様な主体による支援活動やサービスの発見と新たな開発によりそれらを活用しまた、公的制度との関係調整やアドボカシーを通じ必要な政策的対応の実現を目指す。その実践は、移住生活に伴う心理・社会的問題を含むクライエントの生活支援ニーズに対し、支援者-被支援者聞の多様な文化的背景への相互理解を深めつつ、ソーシャルワークの価値・知識・技術と、それらに含まれるカルチュラル・コンピテンス(多文化対応力)に基づいて行われるものである。」とした。日本の現状を考えるならば、外国人住民自身が日本人住民と共に、地域における生活課題の解決に向け取り組みを行っていくこと、そこでは外国人住民のエンパワメントの視点がより一層重要である。当事者と共に行う多文化コミュニティソーシャルワークを考えていくにあたっては、これまで整理を行ってきた国内およびモントリオールでのインタビュー調査の丁寧な分析が必要との認識に至り、後者については今年度末にテープ起こしを業者に依頼した。今後、さらに分析を進めていき、実践を踏まえた理論化を行い、論文投稿を行っていく予定である。
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