認知症高齢者は、その脳の疾患故に覚醒と睡眠のリズムが崩れやすく、昼夜逆転傾向に陥りやすいことが知られている。また75歳以上の後期高齢者は、腎機能が低下することから最小限の薬剤使用に努め、極力、適切な介護サービスを通し生活リズムを整えていくことが重要であると言われている。しかしながら、2013年に名古屋市内の特別養護老人ホームにおける介護福祉サービスの質に関する調査では、半数以上の施設で常時、認知症高齢者に対し睡眠剤を使用していることが明らかになった。 特別養護老人ホーム入所の認知症高齢者の睡眠リズムの実態を明らかにした上で、昼夜逆転現象の見られる認知症高齢者に対し、睡眠リズムの適正化を促す支援プログラムを開発し、その実践の効果を検証することを本研究の目的とした。 そのために特別養護老人ホーム入所の認知症高齢者の睡眠状況の可視化を図り、その要因の類型化を行った。その類型化に基づき、それぞれの原因ごとに睡眠リズムの適正化を促すためのアプローチを取ることにより、睡眠リズムの適正化が図れることを確認した。ただし基本的な生活支援だけでは睡眠リズムの適正化を促せない事例もあり、睡眠障害の診断が下されていない入所者の中に、実際には睡眠障害を有する方もいる可能性が示唆された。これについては適切な多職種連携が行えて初めて、睡眠リズムの適正化に至ることが出来た。今回の研究では、睡眠障害を有する高齢者は対象外と考えていたが、実際には特別養護老人ホーム入所の認知症高齢者の中には、診断が下されず睡眠障害がそのまま放置されている事例も存在する可能性が高いことが示された。
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