研究課題/領域番号 |
15K03977
|
研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
鷲野 明美 日本福祉大学, 福祉経営学部, 助教 (50711587)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 刑事司法 / ソーシャルワーカー / ドイツ / フランス / スイス / 司法福祉 / 刑事政策 |
研究実績の概要 |
本研究は、平成27年度から29年度までの3か年で、日本の刑事司法におけるソーシャルワーカーの役割の現状と課題を明らかにし、ドイツ、フランス、スイスとの比較研究を行うことで、今後の日本の刑事司法における入口支援(被疑者・被告人段階での支援)、保護観察、出口支援(刑務所入所中および出所時の支援)でのソーシャルワーカーの役割に関して一定の示唆を与えることを目的としている。 平成27年度の研究内容は次のとおりである。 まず、日本、ドイツ、フランス、スイスに関する文献、論文、ホームページを活用した調査を行うとともに、ドイツ、フランスでの現地調査(平成27年4月、5月)を行った。なお、これらの現地調査は、日本福祉大学「人を対象とする研究」に関する倫理審査委員会規程に基づく審査で承認を受けたうえで実施した。 上記研究より、日本の保護観察、出口支援に関しては、国の制度に基づきソーシャルワーカー等が創意工夫しながら取り組んでいる一方で、入口支援に関しては、検察庁、弁護士会、民間団体等が各地でそれぞれの取り組みを展開しており、その方法およびソーシャルワーカーの役割は様々であることを確認できた。 また、ドイツでは、検察庁に所属するソーシャルワーカー等の裁判補助官が検察、裁判の段階で行った調査結果を裁判等で参考にし、必要な支援にもつなぐという仕組みをとっている。そして、刑務所に配置されたソーシャルワーカーは、入所から退所までの一連の流れのなかで支援している。また、保護観察、受刑者支援団体等との連携も密に行われており、罪を犯した人への支援を切れ目なく行う体制が整っていた。 さらに、フランスでは、入口支援には民間団体が関わっており、社会復帰・保護観察所のソーシャルワーカーが、罪を犯したあらゆる人に対して、施設内処遇、社会内処遇の区別なく、一連の流れのなかで首尾一貫した支援を行っていることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は日本、スイスを中心とした研究、現地調査を行うこととしていた。しかし、日本の入口支援に関する状況把握、調査対象選定に時間を要したことから、現地調査に関しては平成28年度に行う。また、同様に、スイスに関しても、各州の制度、組織体制に関する研究に時間を要したことから、スイスでの現地調査は平成29年3月に実施することにしている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、平成27年度に予定していた日本、スイスを中心とした研究を行い、それに加え、ドイツ、フランスに関する研究の一部も平行して行う。 まず、日本に関する研究は、法務省、厚生労働省、検察庁等を対象とした聞き取り調査を行う(平成28年8月~平成29年2月予定)。次に、スイスに関する研究は、文献等資料による調査を継続するとともに、スイス司法警察省等への現地調査を実施する(平成29年3月予定)。なお、スイスに関しては、これからも継続して実施する文献等資料による調査段階で、さらに調査対象の選定を行う。このほか、ドイツ、フランスに関する研究は、すでに現地調査を実施したことから(平成27年4~5月)、今後文献等資料による研究、調査機関へのメール等を活用した調査研究を実施する。 そして、平成29年度には、当初の計画どおり、平成27年度および平成28年度の研究のまとめと分析を実施し、日本における「刑事司法におけるソーシャルワーカーの役割」に関する政策提言を行う。 これらの研究で得られた成果については、法務省、厚生労働省、その他関係機関に随時情報提供する。また、日本司法福祉学会全国大会・自由研究発表等、機会を見つけて積極的に報告するとともに、「司法福祉学研究」「比較法雑誌」「中央大学大学院研究年報」等への論文投稿を行う。 さらには、研究の総まとめとして報告書を作成し、研究者、司法関係者、福祉関係者に広く発信することを考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
日本、スイスに関する状況把握、現地調査対象選定に時間を要し、現地調査を平成28年度に行うこととしたため、調査旅費、通訳・コーディネートおよび翻訳指導にかかる謝金等の次年度使用額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
スイスでの現地調査に関しては、調査旅費(交通費、宿泊費)に加えて、通訳・コーディネートおよび翻訳指導にかかる謝金等が必要である。
|