研究課題/領域番号 |
15K03979
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研究機関 | 日本社会事業大学 |
研究代表者 |
倉持 香苗 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 講師 (40469044)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域拠点 / 社会的孤立 / 地域再生 / 福祉コミュニティ / コミュニティソーシャルワーク / コミュニティカフェ / 居場所 / 地域福祉 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、前年度までの研究に引き続き、多世代が利用することができる拠点を地域に設置する意義を検討した。具体的には各地域拠点において参与観察を実施したほか、主に以下の4点に取り組んだ。 第1に、横浜市A地域ケアプラザと協働したワークショップを開催した。前年度はまち歩きを中心として、地域内における福祉実践に関する理解を深めることができたため、今年度はその内容を踏まえ、地域のマップ作りに取り組んだ。具体的には、A地域ケアプラザおよび地域内における複数の拠点にマップを掲示し、誰もが書き込めるよう工夫しながら作成した。この取り組みは地域情報を再発見する機会になったほか、関係機関との連携や、地域内の小学生との交流が生まれるなどの成果を生んだ。 第2に、横浜市B地域ケアプラザにおいて、住民により持ち込まれた地域課題に対する取り組みとして創出されている、食を通じた地域拠点において参与観察を実施した。議論を重ねながら場を創出する過程において専門職のアプローチが重要である旨が明らかになった。 第3に、地域拠点Cの活動記録を分析した。約20年間の活動内容を明らかにするため、現存する活動記録や、地域拠点Cから発行される印刷物を手掛かりに、利用人数およびプログラム内容の変遷をグラフ化したほか、運営体制の変遷について整理した。この取り組みにより、利用者層の変遷は政策を反映しているのではないかという点が新たな仮説として生まれた。 第4に、地域拠点Dが主催している地域イベントにおいてアンケート調査を実施した。前年度は、地域拠点付近で開催された地域イベントにおける調査を実施し、スタッフのアプローチにより参加者が知り合う様子が明らかになった。その結果を踏まえ、スタッフのアプローチの意義について考察するため、ターミナル駅付近で開催される地域イベントに焦点を当てた。両者の比較分析は次年度に予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果を踏まえながら取り組むことができた。具体的には、地域拠点との協働事業の実施および各地域拠点における参与観察を継続し、本研究課題を深めた。とりわけ住民が地域の福祉課題に気付く契機になった事業や、地域の福祉課題に対する住民の気付きから生まれた、食を通じた場づくりは、事業を実施する過程を通じて、住民が支え合うことの重要性について住民自身が気付く機会になったほか、専門職によるアプローチの重要性が明らかになった。 研究手法としては、参与観察、インタビュー調査、アンケート調査、資料分析などを用いた。量的および質的調査を組み合わせたトライアンギュレーションの手法は、一つの場を複数の視点から捉えることを可能とし、有効な方法であったと考えている。 さらに本年度の研究を通じて、本研究課題に取り組むための新たな取り組み課題が生まれた。具体的には、住民の活動を支えるために専門職あるいはスタッフが関係機関および住民とどのような連携をし住民の活動を支えているのかという点である。この点については次年度に取り組む計画を立てている。 以上の理由から、研究はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度になるため、これまでの研究を継続しながら、各フィールドにおける取り組み課題をまとめる計画を立てている。具体的には以下の3点について取り組む。 第1に、地域拠点を利用する、あるいは地域拠点における事業に参加することによる他者理解について考察する。具体的には、地域拠点を利用することにより気付いた地域の福祉課題、さらに参加者同士あるいは参加者と住民の関係性の構築について整理し、地域拠点の意義について考察する。 第2に、地域拠点における専門職のアプローチについて検討する。そのために、地域拠点Aにおける協働事業を継続する。具体的には、マップ作成の過程における専門職のアプローチについて整理する。さらに、本事業を通じて、地域拠点Aがこれまで関係を持っていなかった関係機関と関係性を構築することが出来たことから、関係機関との連携および地域拠点の意義を広い視点で考察したいと考えている。また、その他の地域拠点おいては、住民あるいは利用者によって持ち込まれた福祉課題に対して専門職がどのように対応したのか、あるいは場づくりにおいてどのようなアプローチをおこなっているのか等について、ワークショップを通じて専門職と共に検討する計画を立てている。そのほか、前年度実施した地域イベントに関するアンケート調査の分析を通じて、スタッフのアプローチの重要性について検討する。 第3に、誰もが利用することができる地域拠点の意義について明らかにするために参与観察を継続するほか、参加者に対するアンケート調査を実施する。前年度の研究において、地域拠点の参加者が、受け身ではなく、場を創り出す者すなわち主体者として意識している点もあるのではないかと考えられた。最終年度では、こうした参加者の意識を明らかにすることで、地域拠点の意義に関する考察を深めていく。 以上の取り組みにより、本研究課題が達成できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね計画通りに予算を執行した。参与観察で現地を訪問した際に、当初の予定より長時間滞在し、打合せ等を行うことも少なくなかったため、会議費をはじめとするその他の支出項目に関する繰り越しが発生した。また、宿泊を伴う遠方の地域拠点滞在については、当初予定していた複数回に分けて滞在する計画から、比較的長期間の滞在に切り替えたため、旅費(飛行機)に関する繰り越しが発生した。いずれも次年度の研究に含めて執行する予定である。
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