平成30年度は、引き続き前年度までの研究に取り組んだほか、主に以下の三点について取り組んだ。 第一に、誰もが利用できる地域拠点を設置する意義を考察するために、地域拠点Aの利用状況調査を実施した。参加理由については「自分のため」「(障がい者も含めた)多くの人との出会いがある」など、誰もが利用できる場ならではの理由が挙げられたほか、「誰かの役に立っていると思う時」は「主体的に関われる時」「運営に関われる時」等が挙げられた。講座の開催を増やすことについては「自発的に考えて増えることが望ましい」「特に決めなくてもやりたいことが出来たらいい」といった意見があった。すなわち地域拠点における、参加者と共に場を創出するスタッフのアプローチは、他者との交わりのみならず参加者の主体性を生み出すと考えられた。 第二に、地域住民が地域拠点に積極的に関わるための専門職のアプローチを検討するため、地域拠点Bにおいて誰もが利用できる食堂の運営の参与観察をおこなった。特に、一部の住民から持ち込まれた地域課題を専門職が把握した後、①他の住民が地域の課題として捉え、②住民主体による地域拠点を立ち上げ、③自主的に運営するために、どのように関わるのかという点に注目した。地域課題を自らの課題として捉え、自分たちに何ができるか検討する機会を初期の段階で頻繁に設けることが重要である旨が示された。 第三に、地域拠点から離れた場所で定期的に開催されている地域イベントについてアンケート調査を実施した。「知り合った人がいる」が41%で、そのきっかけは「何度か顔を合わせているうちに知り合った」が48%で最も多く、拠点から離れていても参加型のイベントを定期的に開催することで、関係性が構築される旨が明らかになった。 以上の取り組みを通じ、地域拠点を設置する意義および支え合う関係を創出するスタッフのアプローチ内容について考察を深めた。
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