研究課題/領域番号 |
15K03991
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
櫻井 純理 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (10469067)
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研究分担者 |
長松 奈美江 関西学院大学, 社会学部, 准教授 (30506316)
阿部 真大 甲南大学, 文学部, 准教授 (60550259)
嶋内 健 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (70748590)
仲 修平 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員 (60732401)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アクティベーション / ワークフェア / 生活困窮者自立支援事業 / 地域就労支援事業 / デンマーク / ガバナンス / 地方自治体 / 就労支援 |
研究実績の概要 |
本研究は日本におけるアクティベーション政策(就労困難者や生活困窮者に対する生活保障・就労支援政策)の課題について、特に政策ガバナンスの側面から検討・分析することを目的としている。地方自治体レベルでの政策の実情を具体的に解明するとともに、国際比較を通じた特徴の掌握にも重点を置く。平成28年度の研究実績は以下の通りである。 1.生活困窮者自立支援事業に関する調査研究:平成27年度に引き続き、大阪府枚方市の事例調査と分析を進めた。具体的には、8-9月にかけて枚方市生活福祉室、ハローワーク枚方、NPO法人ホース・フレンズ事務局に対する聞き取り調査を実施し、データ分析と学会発表および学術論文の公表を行った。 2.地域就労支援事業(大阪府独自事業)に関する調査研究:8月に大阪府内の基礎自治体に対してアンケート調査票を送付し、9月までに43自治体中40自治体からの回答を得た(回収率93%)。同年度中は基礎集計の作成までを終えており、今後の詳細な分析を通じて自治体間格差の実態や要因を明らかにしていく。 3.コペンハーゲン市のアクティベーション政策に関する調査研究:OECD加盟国のなかでも積極的労働市場政策への(GDPに占める)財政支出割合が最も高いデンマークにおいて、地方自治体の政策実態を調査した。調査は平成29年3月、コペンハーゲン市の部局(雇用統合課、人事課)、ジョブセンター・雇用センター、職業教育機関、社会的企業、民間企業など9か所に対し、事前に調査票を送付したうえで半構造化聞取り調査として実施した。 4.上記の諸調査研究の準備と議論のために、研究会を2回(平成28年6月5日、平成29年1月25日)実施した。6月の研究会には政策実践に関わる支援者2名(A’ワークの西岡正次氏、および豊中市くらし支援課の小川英子氏)を招き、意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画段階から、本研究において実施する調査研究の対象を以下の3つと考えていた。すなわち、(1)大阪府独自事業である地域就労支援事業(アンケート調査に基づく自治体間比較)、(2)大阪府内の基礎自治体による生活困窮者支援事業(聞き取り調査に基づく事例研究)、(3)北欧諸国におけるアクティベーション政策の実態(聞き取り調査に基づく事例研究)である。このうち、(1)については当初計画よりも時期が遅くなったが、平成28年度にはアンケート調査の実施と基礎的な分析を終えており、平成29年度中により詳細なデータの分析と解釈を進める予定である。 (2)については順調に進捗しており、大阪府枚方市での調査結果に基づくいくつかの研究成果を公表済みである。また、(3)についてもコペンハーゲン(デンマーク)での調査を当初予定どおり行うことができ、データの整理と分析に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は最終年度にあたることから、ここまでに実施した諸調査の分析結果を精査し、主要な論点の洗い出しと調査における発見の確認を通じて、当該テーマに関わる一定の結論を提示していくことが必要である。そのために、以下のような内容・スケジュールで研究を推進する。 1.平成29年4月~7月:①地域就労支援事業に関するアンケート調査の詳細な分析と、自治体間比較のモデル(仮説)提起を行う。②デンマーク調査における発見の確認・議論を通じ、日本の政策との比較研究を進める。 2.平成29年8月~10月:③生活困窮者支援事業に関する新たな自治体調査(アンケート調査および聞取り調査)を実施・分析する。④デンマークでの追加調査を実施し、不明確な論点に関する確認と新たなデータの収集を推し進める。 3.平成29年11月~平成30年3月:⑤これまでの調査研究を総括し、得られた新たな知見・結論についての公表を行うとともに、今後の研究課題を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.2017年3月にデンマークでの聞き取り調査を実施するために(=実施済)、旅費や日当にかかる費用について1人あたり40~45万円の予算を見込んでいた。結果的に、同行した研究分担者のうちの1名は、別の科研の分担金から今回の旅費等を支出したため、その1名分の旅費等を使用せず次年度に持ち越すことになった。 2.上記のデンマーク調査で得られたデータ(インタビューを録音した音源)に関して、業者にテープ起こしを発注した。このテープ起こし・記録作成に関わる費用を当該年度の支出に含めて申請していたが、業者からの請求・支払いは次年度に繰り越されることになったため、約50万円の未使用額が生じた。 3.次年度使用額約115万円のうち、約95万円は上記2つの理由によるものであり、その他の20万円は最終年度の追加調査に備えて繰り越した金額である。
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次年度使用額の使用計画 |
1.2017年3月のデンマーク調査で支出しなかった1名分の旅費・日当等に関しては、2017年度中に(9月を予定)当該分担者によるデンマーク追加調査を実施する際に支出する予定である。 2.上記「理由」欄の2に記した通り、調査データのテープ起こしはすでに業者に発注しており、2017年度経費から支出していく。 3.その他の20万円については、国内での追加調査(豊中市および枚方市)にかかる費用(主としてテープ起こし代金)にあてる予定である。
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