研究課題/領域番号 |
15K03998
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研究機関 | 大阪人間科学大学 |
研究代表者 |
時本 ゆかり 大阪人間科学大学, 人間科学部, 准教授 (50581055)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 定住・移住 / 島嶼地域 / 離島 / 介護 / 文化継承 / 農業 / 地域福祉 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、秋期、冬期に現地を訪問し、公的機関、福祉関係者、伝統文化継承者、福祉医療機関、農業関係者から聞き取りを行った。また、高校生対象に地域への愛着を確認するためにアンケート調査を実施した。1.文化継承的側面からは、先島諸島における比較的小規模離島(小浜島、多良間島)の文化継承的な要素から人の移動と地域社会の存続を捉える事を試みた。両島では、高齢女性による織物による文化継承がなされていた。その形態は生活文化に根付いたもの、地域ビジネスを狙って復元されたものと異なっていた。2.地域の基幹産業である農業の分析では、先島地域の農業の存続と後継者について聞き取りを行った結果、島によってばらつきはあるものの、農業は60歳以上の高齢者によって支えられていた。宮古島市2名、竹富町4名のインタビュー調査から農業後継者をめぐる状況について把握した。Uターン者は家族の影響を受けて当初からいずれ帰ってきて農業をするという意識を持っている。Iターン者は農業が目的という以上にこの地域の自然や文化、人間関係等の魅力によってこの地域での定住を求めており、その一環として農業を選択していることがわかった。3.地域に溶け込み生活するIターン者からインタビューを行い、地域との接点と意識についての現状を把握した。4.高齢期の介護問題に関する定住の状況を把握するため、在宅系介護事業所、医療機関、民生委員他にインタビュー調査を行った。全般的に公的介護サービスの情報浸透が不足していること、年金所得によって介護・医療費負担が重くのしかかる状況であることがわかった。比較的大きな離島では、地域によってサービス提供に差が生じていること、移住してきた介護専門職への期待があることが分かった。また、小規模離島では要介護状態が進と自宅を離れ島から出ていかざるを得ない状況であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者をはじめ研究協力者を含めて地道な積み重ねと人脈を拡大しながら現地調査が行えており、平成28年度に遂行すべき課題はおおむね達成できており、次年度には発展させた調査研究ができる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
伝統的文化の側面からは、織物に関わる人々の思い、動きを検討していく。産業の側面からはできるだけ多くの地域の農業者と接点を持ち、質的な調査を積み重ねる。地域性に根差した高齢移住者の地域調査と地域文化についても分析を拡げる。高齢期の生活問題の側面からは、介護期を踏まえた定住の状況を高齢者本人、本人を取り巻く家族、地域住民から、島の規模を踏まえて分析し、量的調査のベースをつくる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に中間報告書印刷を計上したが、平成29年に印刷することになったため。また、現地調査の延べ回数が計画よりも減になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は中間まとめを報告書として印刷する。また、年間延べ8名、1週間程度の旅費を確保して現地調査を行う。
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