前半期は、先島地域の高齢生活者の課題や介護の現状について、また若者の帰郷意識について大小離島での調査分析を行った。そこからは、高齢者支援の問題に関心が高いことがわかった。介護人材不足によりサービスが少ないことから、要介護の人では島を離れることが常態化している。高齢者の困りごとには公的支援の枠を超えて事業者が善意で対応している現状があった。介護系の業種によっては多くのIターン者が活動しており、介護人材確保には自然環境に支えらえた観光振興が密接に関連することが示唆された。高校生の9割近くは沖縄本島や県外に進学・就職するため島を離れる。卒業を機に一度は島を離れるが、いずれは島に帰って来たいという意識が強い。特に島内出生者は島外出生者よりも帰郷意識が高いことが明らかになった。家業の影響を受けて当初からいずれ帰って来たい希望をもっているも、農業は低収入であることや仕事がないことから、帰ってくるのを断念する人もいる。 これらから高齢者が最後まで島で生活をしていくためには、家族・親族となる若者の帰郷意識の維持・醸成とそれに応えられるよう島内産業が活性化し、収入が確保されることが重要になる。要介護者の最期の砦となる公的介護サービスは、すでに小規模離島では需給バランスが崩れておりサービス不足が続いている。既存の枠組みにとらわれず早急な対応策が必要である。 後半期は住民がどのように捉えているのかを明らかにするために検討した。どの年代においても介護サービスの安定を重要ととらえており、特に経済困窮層では切望する傾向があった。また、家族・親族が島内にいることが不可欠であること。伝統・文化の継承は集落の維持、繁栄、さらには高齢者の役割に欠かせないものであった。Iターン者は家計の安定や介護等の生活の安寧を求めている。これらは高齢者のいる家族を含めた地域住民の暮らしを継続するための課題となる。
|