研究課題/領域番号 |
15K03999
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
陳 礼美 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (40510160)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 社会福祉 / 高齢者 / ボランティア / 組織 / ソーシャルワーク |
研究実績の概要 |
本研究の目的は日本における高齢者ボランティアを用いて活動する地域組織を対象に高齢者ボランティアを確保し、維持する「組織能力」はどのような要因で形成されているかについて調査を行うことである。同じような研究を行ったアメリカの調査票を日本語に訳し、日本語版を用いて調査票のパイロットスタディーを実施した。回答を基に因子分析を行った。本研究ではアメリカと同じような共通因子を6つ抽出し、日本語版の有用性を明らかにした。第1因子は「組織の運営・管理に携わるルールが明確であるか」である。過半数が職務内容の詳細、行動規範、そして守秘義務が文書化されていることがわかった。第2因子はボランティアの募集やイベントに関する情報発信である。どの項目でも口頭での情報発信が最も高いことが分かった。第3因子はボランティア活動に必要なスキルのワークショップを実施しているかについてで、日本においてもコンピュータスキル等様々なワークショップを提供していることが明らかになった。第4因子は「ボランティアの功績をたたえる機会があるか」でアメリカでは約9割がやっていると答えており、日本ではわずか約25%であった。第5因子はボランティアの役割の柔軟性等について聞き、自分にあった職務内容や活動日時を選べることや健康状態に対して融通がきくことが重要だとわかった。最後の因子は、ボランティアが組織の日々の運営・管理に携わっているかについて聞いたところ、最も高かい項目はスタッフ会議への出席だった。また、日本の組織はボランティア維持と確保にあたりどのようなことを重要視しているのかについて統計的に優先順位を見出した。日本では、活動費と統合性が組織力に重要視されていることに対しアメリカの団体は、宣伝力とボランティアの功績を讃える力だった。これらの結果をアメリカの研究結果と比較し、学会発表を行い、更に図書として執筆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
日本語版調査票をもとにアンケート調査を実施した。対象は2つのNPO団体から福祉系の活動を行っている約500件の組織のメーリングリストを基にアンケート調査票を郵送した。アンケートを郵送した結果、回収率は約3割、有効回答率は126件であった。アンケートを送った組織の中には住所が変わってアンケートが「宛先不明」で返送されてきたところや、活動をやめた(または中断)している、またはボランティアがいない(減った)ところが多かったために回収率及び有効回答率が低く、分析に至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
回収率及び有効回答率が低かったため、次年度はサンプル数を126から200に増やすために他のメーリングリストの入手を行う。また、返送されてきたアンケートの中で答えが抜けていたり、明確ではなかったりしたものについて再度電話連絡をとって答えを埋めていく作業を行う。
目標のサンプル数が得られた後、ボランティアの維持と確保に関連する要因を量的分析を用いて明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
サンプル数の確保が難しく、計画していた結果を得ることができなかった。そのため、予定していた学会での研究成果発表などに至らず次年度未使用額が生じた。
サンプル数を増やしていくための通信費や成果発表のための旅費に充てることとする。
|