少子高齢化によって深刻化する社会保障制度の財政と人的資源の問題を解決するために、地域福祉の積極的な役割が求められており、特にNPOの活躍を活かした様々な取り組みがなされている。高齢者のいきがいや介護に携わる「福祉系NPO」の活動を支えるのはボランティアが多いが、近年ではボランティア希望者が減っていることから、NPOの人手不足と更なる高齢化が起きている。しかし、このような課題に対して地域のNPOがいかにボランティアの確保と活動継続に対する戦略を行っているか、それに対するエビデンスに基づいた評価はあまりされておらず、またボランティアの高齢化が進んでいるにもかかわらずボランティア研究の多くは若者に焦点をあてた研究が多い。 そこで本研究では、高齢者のいきがいや介護などに携わる「福祉系NPO」でどのようなボランティアを確保し、活動継続を促しているか、これらの取り組みの現状を把握し、今後の日本のNPOのボランティアマネージメントのベストプラクティスに向けた知見を得ることを目的とした。「福祉系NPO」の全国的組織3団体からメーリングリストをもとに郵送アンケートを行った(523件のうち148件28%回収率)。市町村レベルで活動を行っているNPOが88.5%と最も多く、次に県レベル(17.7%)、地方レベル(7.1%)、と国レベル(3.5%)であった。ボランティアの募集枠は1名から500名まで幅が広く、平均63.94名あった。本研究で開発した指標をもとにボランティアマネージメントに関する活動を調べたところ、ボランティアの役割を明確にして、募集の宣伝を行っているNPOは多いが、約半数程度がボランティア活動に対する現物・現金支給やボランティア活動を表彰する等の奨励活動を行っていた。アメリカと比較したところボランティアを団体に必要な人的資源として育成する視点が未発達である団体が多いことがわかった。
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