研究課題/領域番号 |
15K04001
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
安田 美予子 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (40340913)
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研究分担者 |
川島 惠美 関西学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (00319815)
得津 愼子 関西福祉科学大学, 社会福祉学部, 教授 (50309382)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 社会福祉施設 / ソーシャルワーク / 組織開発 / アプリシエィティブ・インクワィアリー / 協働実践・研究 |
研究実績の概要 |
研究代表者は研究フィールドである障害者支援施設の管理者・サービス管理責任者・チームリーダーと協働実践・研究を進め、次の点を達成した。1.研究目的達成のための組織開発の手法としてAI(アプリシエィティブ・インクワィアリー)の採用と実践:文献研究と施設のアセスメントに基づき、施設のニーズに応える組織開発の手法としてAIが採用された。研究代表者は関連ワークショップやセミナーに参加しAIや組織開発の実践力を高めつつ、協働実践・研究チームの職員に対し、AIの理論と具体的手法を体験的に学ぶ研修会を開催した。これは、組織外のコンサルタントや研究者でなく、組織開発の手法を用いて施設職員自ら組織開発を進める力を養うことを目的とするからである。その成果として、チームの職員がAIの一部をグループホームの世話人研修で活用したことがあげられる。研修会は1回につき約3時間で、計7回実施した。2.チーム職員の変化:AI研修会を通じて、施設日常業務での一般職員との係わりにおいて職員個々と対話することの重要性を学び、それを意識的に行うようになった。これは管理職クラス職員と現場職員の関係性の改善や強化につながり、利用者支援や人的資源管理上も意味がある。3.研究代表者の変化:協働実践・研究チームにおいて、「省察する実践者」として自分が存在し、施設職員と係わることの重要性に気づき、その実践に努めた。 研究分担者は協働実践を評価するために、施設管理者とサービス管理責任者に対しインタビューを行った。その分析結果は研究代表者の施設における実践の参考になっている。平成27年度実施計画にはなかったが、ある保育所における組織開発のニーズの高まりを受けて、研究分担者が障害者支援施設での実践を参考に、AIベースの研修会を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.協働実践・研究で用いる組織開発の手法をAIに決定し、協働実践・研究チームのメンバーである研究代表者と施設管理者・管理職がその内容を理解し、実践する力も養われつつある。 2.協働実践・研究を通じてチームメンバーが自律的に変化している。職員は学習内容を施設の日常業務に活かしている。研究代表者は「省察する実践者」という組織開発実践者のあり方を発見し、それをもとに施設での組織開発を進めている。これは、最終年度に実施予定の組織開発を用いた組織に変化をもたらすソーシャルワークの考察に有用である。 3.研究フィールドである障害者支援施設での実践で得た知見を、研究分担者が他の組織で応用している。
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今後の研究の推進方策 |
1.研究代表者は施設との協働実践・研究で次の方策を用いる。 (1)施設管理者のニーズに基づき、AIをベースに、主な研究フィールドである障害者支援施設から事業所として独立した共同生活介護・共同生活援助時事業所(グループホーム)のビジョンや目的、事業計画・方法などを策定する。一般職員も交えて実施する予定である。(2)AIをベースに障害者支援施設のビジョンや目的、事業計画の策定を開始する。一般職員も交え実施する予定である。(3)以上でAI実践に参加する一般職員の変化をアンケート等で評価するため、組織開発実践の評価方法の文献研究を行い、評価項目を明確にする。(4)マクロソーシャルワークと組織開発にかかわる文献研究を行う。(5)研究フィールドである障害者支援施設やグループホームをはじめ社会福祉施設の組織開発にかんするニーズに応えるため、AIや他の組織開発の手法にも注目し知識と実践力をつける。(6)他の施設・事業所から社会福祉施設マネジメントにかかわる専門知識を獲得する。 2.研究分担者は次のことを行う。 (1)障害者支援施設の管理者とサービス管理責任者に対し、協働実践・研究評価のための質的インタビュー調査を継続して行う。研究分担者はその分析結果を研究代表者にフィードバックする。(2)保育所における組織開発実践やそのフィールドワークを行う。障害者支援施設における実践の比較事例として、組織開発を用いた組織に変化をもたらすソーシャルワークの考察に用いる。(3)マクロソーシャルワークと組織開発にかかわる文献研究に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者2名の分担金が繰り越された。研究分担者である川島は、研究代表者とともに障害者支援施設で組織開発実践を進めるという計画で、関連セミナー・ワークショップの参加費・旅費を計上していた。しかし途中から、施設の実践は研究代表者が行い、川島は他組織の組織開発に参加しフィールドワークを行うという役割に変わった。他組織での実践のペースが比較的ゆっくりしていることから、計画時ほどセミナー・ワークショップに参加することがなかっため未使用額が生じた。もうひとりの研究分担者である得津について、協働実践・研究チームの施設管理者・管理職に対する質的インタビューを年2回実施する予定で、音声データおこしの人件費を計上していた。しかし1回目のインタビュー実施後、データ分析にかなりの時間がかかること、また施設側も年2回のインタビューは負担であることが分かり、2回目のインタビューを実施しなかったため未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
セミナーやワークショップなど各種研修会参加や専門知識の収集に係わる旅費、並びに、音声データおこしや専門知識の提供に対する人件費・謝金に充てることとする。
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