M.Polanyiは、その著書「暗黙知の次元」の中で、「私たちは言葉にできるより多くのことを知ることができる」と述べている(M.Polanyi 2003:18)。言葉では説明できないが、理解して使っている知識があることに気付き、「暗黙知」と名付けた。知識の背後には必ず“暗黙の次元の「知る」という動作がある”ということを示した概念である。一方、野中は、日本人の暗黙知と欧米人の暗黙知の違いとして「米国企業の弱点として、形式知が先行する。しかし、日本企業では、暗黙知が組織に蓄積されやすく、さらに合理化して説明する必要もなくコンセンサスが得られやすい」と述べている(野中1990:229)この日本型暗黙知を生活の場面に視点を向けて考えてみると、やはり言葉の行間や間、脈絡に多くの暗黙知が潜在化していることを予想できる。本研究は、生活支援の中に存在する介護の暗黙知を表出させ、評価しにくい介護を「見える化」することを目的とする。野中の「SECIモデル」を介護バージョン改変し、パレートの法則を介護分野に置き換えて「80%の信頼を培う、20%の関わり方を見つける」という視点で暗黙知の可視化を試みた。結果、H27/28年調査をもとに、野中の「知の変換過程の類型」を参考として、新しく「CSA介護技能分類表izumi2018」を開発した。日本的「知」の方法論の文脈として、生活の中の「介護の暗黙知」は、一人一人の対象者とかかわる中で、直観的理解と分析的理解として「個人の中」にかなり蓄積されている。この個人に内在化される経験知・介護の見えにくい専門性を、手続き的知識として暗黙知の手法的技能を対応させ、宣言的知識として形式知に変換できたなら当事者のエンパワメント支援・介護職の職務エンパワメントにも応用できる。また見えにくい介護に対し確かな根拠のある専門力として第三者に伝承可能である。
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