平成30年度は本研究の最終年度であり、研究成果をまとめ、公表を行った。前年度と同様に、おおむね月1回程度の研究会を開催し、成果をまとめる作業を行った。 30年度は、研究期間全体を通じての成果として、国際公共経済学会の学会誌『国際公共経済研究』に「英国介護政策における第三者アドヴォカシーのコミッショニング体制:チャリティの変容の視点から」を公表した。また、同じく国際公共経済学会の春季大会において、「英国介護政策の利用者費用負担の実態」の報告を行った。 これらの成果は、いずれも研究期間全体を通じての現地でのヒアリングや文献資料をまとめたものである。公表論文は、介護政策におけるチャリティの第三者アドヴォカシー機能の実態、チャリティの近年の変容ついて検証したものである。英国では2005年の意思決定能力法において、意思決定能力が十分ではない人の第三者アドヴォカシーを実践することが重要視された。論文では、自治体がパートナーシップ組織を形成し、そこでコミッショニングを行っている実態を検証した。その対応のために、チャリティ側が連合を組んで多様な利用者のアドヴォカシー機能を果たしている点を明らかにした。また、この背景にある緊縮財政の影響についても分析を行った。 学会報告は、英国の介護政策における利用者の費用負担における資産活用の現状を分析したものである。費用負担の観点から資産活用を利用者に求める政策の背景には、緊縮財政の影響があることを明らかにした。とりわけ中央政府からの補助金への依存度が高い自治体では、利用者は資産活用も難しく、必要なサービスを受けられないといった問題があることを指摘した。わが国においても利用者負担を高める場合、英国の経験は示唆に富むものであることがわかった。
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