研究課題/領域番号 |
15K04005
|
研究機関 | 近大姫路大学 |
研究代表者 |
松島 京 近大姫路大学, 教育学部, 准教授 (20425028)
|
研究分担者 |
松浦 崇 静岡英和学院大学, 人間社会学部, 准教授 (20512643)
吉田 晃高 近大姫路大学, 教育学部, 講師 (70329423)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 外国につながりのある子ども / 外国籍児童 / 子どもの権利 / 社会的養護 / 子育て支援 / 社会的排除 |
研究実績の概要 |
本研究は、児童養護施設に入所する「外国につながりのある子ども」およびその保護者の現状と支援における課題を明らかにし、外国につながりのある子どもに対する社会的養護のあり方を検討することを目的とするものである。 現時点での課題を整理した内容は次のとおりである。日本で生活をする外国につながりのある子どもは増加しており、その中には、無国籍やネグレクトという権利侵害ともいえる深刻な生活状況にある子どもたちがいる。近年、社会福祉分野では、滞日外国人を対象とした多文化ソーシャルワークという実践も展開されており、児童福祉もその一分野として焦点化されてきてはいるが、児童養護施設等、児童福祉施設における当該の子どもの支援についての研究はまだ少ない。だが、日本で生活する当該の子どもは貧困状態に陥りやすく、その結果として深刻な社会的排除状態におかれやすいことも指摘されている。 また、日本社会においても、家庭で暮らせないことに加え、虐待で心に傷を受けたり、障がいがあるなど、何重もの困難を抱えた子どもが増加し、社会的養護の必要性が増している。家庭(的)養護・小規模ケアの推進など、社会的養護に関する制度改革が急速に進められている中、児童養護施設に入所する外国につながりのある子どもという、複層的な課題を抱える子どもの支援に必要な方策を検討することは、我々が、地域の子ども福祉を向上する上で重要となる社会的養護を充実するにあたり必要とされる、根本的な視点を改めて問うことも可能にすると考える。 このような課題整理をふまえた上で、平成27年度の研究では、児童養護施設に入所する当該児童の国籍や在留資格問題についての具体的な支援策の手引きを作成する等、先駆的な活動を行っている団体への視察調査を行い、問題の現状を把握するとともに、児童養護施設を対象として実施する調査の方法について検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(2)おおむね順調に進展している。とした理由は次のとおりである。 平成27年度の研究計画として、(1)先行研究の整理と蓄積、(2)先進地域へのヒアリング調査、(3)児童養護施設職員を対象としたインタビュー調査を行うことを予定していた。 (1)については主として国内の先行研究をもとに一定の整理を行うことができた。(2)については、先進地域へのヒアリング調査を実施することができた。この中で、新たな視点や整理が必要な課題が浮上した。(3)については(1)と(2)の実施時期が予定よりも時間を有したこともあり実施まで至らなかったが、これは取り急ぎ実施をするよりもインタビュー調査の準備を入念に行うことを優先したことによるものである。また、(1)と(2)を進める中で、児童養護施設の職員を対象としたインタビュー調査を実施するにあたっての課題設定を研究計画当初よりも明確化することができた。 また、(2)の結果より、それぞれのケースは個別具体性や地域の独自性を抱えているものであり、質問紙調査ではケースの抱える課題を十分に把握することは難しいと想定するに至った。そのため、今後は、研究開始当初予定していたアンケート調査を実施するよりも、インタビュー調査の数を増やし、課題の把握に努めることとした。これにより、次年度以降の調査計画を見直し、当初予定よりも深化したものとして進められる見通しが立てられた。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度使用予定の研究費が生じた状況として、1)国外における先行研究整理が不十分であったこと、2)児童養護施設職員へのインタビュー調査を実施しなかったこと、があげられる。「現在までの達成度」で記したように、平成27年度は、課題の明確化に努め、また調査計画の見直しを行った。そのため、当初予定していた研究費を次年度以降に使用することとなった。このことをふまえ、平成28年度以降の研究計画は次の通りである。 (平成28年度) 1)引き続き先行研究の整理と蓄積の継続を行う。移民政策の調査研究など国外の研究も視野に入れ、国内外の関連文献の収集及び検討を継続して行い、研究の精度を高める。関連する研究会等に参加し、研究動向や政策動向の把握及び情報収集を行う。2)児童養護施設の職員を対象としたインタビュー調査を行う。その際は、できる限り、様々な地域の児童養護施設を対象とする。そのためには、現在予定している対象者はもとより、関連する研究会等で社会的養護に関わる現場実践者や研究者との交流を図り、調査地の拡充を図る。 (平成29年度) 1)調査内容の分析と考察を行い、実態報告としてまとめる。また、この内容を、児童養護施設職員との共同研究会にてフィードバックし、再度インタビュー調査を実施することで、課題の可視化と今後必要となる支援方策の検討を行う。2)研究成果の報告を行う。調査結果や支援システムの評価をもとに、その時点で考察したものを、国内学会において報告する。多くの研究者から意見をもらうことにより、研究の精度が高まると考えられる。日本保育学会、対人援助学会での報告を検討している。また、この研究の成果は、論文として学内紀要及び日本保育学会や対人援助学会等の学会誌に投稿をし、最終的に成果報告書としてまとめる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用予定の研究費が生じた状況として、1)国外における先行研究整理が不十分であったこと、2)児童養護施設職員へのインタビュー調査を実施しなかったことがあげられる。「現在までの達成度」で記したように、平成27年度は、課題の明確化に努め、また調査計画の見直しを行った。そのため、当初予定していた研究費を次年度以降に使用することとなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
【物品費】引き続き先行研究の整理と蓄積の継続を行うため、国内文献及び外国語文献を購入する費用が必要である。また、これら資料の整理や、調査データの記録や保存のために、記録媒体や文具類を購入する費用が必要である。【旅費、および人件費・謝金】1)共同研究を進めるための研究会実施にかかる旅費、2)インタビュー調査にかかる旅費、3)調査分析にかかるテープ起こし代金、4)研究成果の報告にかかる学会参加のための旅費、論文投稿時の英語要旨チェック代金、が必要である。【その他】先行研究の整理にかかる国内文献及び外国語文献の複写費が必要となる。また、研究成果の報告にかかる学会参加のための参加費、論文投稿時の投稿費が必要となる。
|