研究課題/領域番号 |
15K04006
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
廣井 いずみ 奈良大学, 社会学部, 教授 (50512860)
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研究分担者 |
岡本 潤子 帝京大学, 文学部, 准教授 (50742095)
坂野 剛崇 関西国際大学, 人間科学部, 教授 (90735218)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 元非行少年 / 社会復帰 / 更生保護施設 / 能動性 / Delancey Street |
研究実績の概要 |
・主として少年を受け入れている更生保護施設5か所の施設長を対象に実施したインタビュー結果について、事例-マトリックス法による質的な分析を行い、施設が少年の社会復帰に果たしている役割について明らかにした。その結果を、坂野が主となり第54回犯罪心理学会においてポスター発表をし、岡本が主となり、帝京大学心理学紀要第21号に発表した。これらの一連の研究結果により、生活開始当初の「基本的生活スキルの確立」、「コミュニケーション能力の向上」、「指導による貯金」という循環が、「基本的生活態度・スキルの向上」、「継続的な就労」、「自己管理による貯金」という好循環へと変化するプロセスを明らかにした。「指導による貯金」から「自己管理による貯金」への変化は、「生活させられている」という受け身の立場から、自立生活を目指して自らが「生活する」という能動的な立場へと変化していくことを象徴的に示していた。そして施設側は、この変化を促進させ、定着できるようにかかわっていることが明らかになった。 ・更生保護施設退所少年5人を対象に、彼らのライフストーリーについてインタビューした。次年度、質的分析により社会復帰のプロセスについて明らかにし、社会復帰を促進、定着させる要因について検討する。 ・サンフランシスコにある元薬物依存者、元犯罪者、ホームレスらの自助組織であるDelancey Street Foundation(以下「Delancey」と記す)において、設立者兼代表者のDr. Mimi Silbert、メンバー6人に半構造化面接を行い、逐語録化し、翻訳した。次年度、インタビュー結果から社会復帰のプロセス、および彼らの社会復帰にDelanceyが果たしている役割について検討する。さらに、我が国における調査結果との比較で、社会復帰を促進、定着させる要因における違い、共通点について明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
更生保護施設の施設長へのインタビューを終え、更生保護施設が少年の社会復帰に果たしている役割について明らかにし、学会発表、論文投稿を行った。 更生保護施設を退所した少年へのインタビューを終え、逐語録化し、現在質的分析を行っている。次年度中に少年の社会復帰のプロセスについて明らかにし、論文投稿を行う。 海外での元犯罪者、薬物依存者の自助組織のインタビュー調査を終え、逐語録化し、翻訳を行った。これについては次年度中に、自助組織のメンバーの社会復帰のプロセスを明らかにし、論文投稿、あるいは学会発表する見通しが立っている。
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今後の研究の推進方策 |
1 更生保護施設退所少年のライフストーリー・インタビューから、社会復帰のプロセスがどのような現象であるのか、心理的側面、行動的側面、環境的側面から明らかにする。 何が退所少年の社会復帰を促進し、定着させるのか、個人内要因、環境要因の双方から検討する。環境要因については、専門機関の働きかけのみならず、インフォーマルな要因も含めて検討する。 2 Delanceyにおける、メンバーのライフストーリーインタビューでも同様に、社会復帰のプロセスがどのような現象であるのか明らかにし、メンバーの社会復帰をささえている個人内要因、環境要因について検討する。環境要因については、Delanceyという施設に特有の構造的側面も念頭に置いて検討する。 3 更生保護施設退所少年の調査結果とDelanceyでの調査結果の比較から、社会復帰のプロセスにおいて共通している側面、異なる側面を明らかにする。さらに社会復帰を促進、定着させる要因についても両者を比較、検討し、フォーマル、インフォーマルな社会復帰支援を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
翻訳料の支払いが、本年度予定されており、残額では支払えなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
翻訳料31万円と振込手数料を支払う。
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