研究課題/領域番号 |
15K04007
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研究機関 | 広島文化学園大学 |
研究代表者 |
河野 喬 広島文化学園大学, 人間健康学部開設準備室, 講師 (20738843)
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研究分担者 |
石倉 康次 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (40253033)
井川 純一 大分大学, 経済学部, 准教授 (90748401)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 刑余者支援 / 出口支援 / 更生保護 / 自助組織 / ダイバージョンプログラム / 就労支援 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,刑余者支援の拠点となりつつある「地域生活定着支援センター」に着目し,その支援体制及び労働環境の調査・分析,外国との比較を通して,刑余者支援の質及び継続性の促進要素・阻害要因を明らかにすることにある。そのため,今年度は前年度のスウェーデン視察及び刑事施設視察で得られた知見を基に比較検討を行い,更に,刑余者及び地域生活定着支援センター支援員への聞き取り調査を行った。 特に,刑余者に対するインタビュー調査において,ひとりの高齢刑余者自身の言葉ではあるが,再犯・累犯の悪循環の実態,更生保護等の権力性に対する抵抗感,及び対等な人間関係の深まりによって触法行為が抑止されたことが語られた。累犯の問題が,生物・心理・社会モデルの観点から多角的に解決が図られるべき課題であり,解決策の一つとして対等な関係性をもつ支援者の存在があることが確認できた。このことは,非権力的な立場から行われる社会福祉援助に一定の意義があることを示すものである。 併せて,地域生活定着支援センター支援員からは,刑余者支援の具体的内容,社会資源及び社会的理解の乏しさ,及び地域生活定着支援事業の不安定性が語られ,未だ専門領域として民間における刑余者支援が確立されていない実態が確認できた。但し,支援員の言葉として,支援対象たる刑余者個人の印象が,経験を積むに従って,犯した罪状と切り離した客観的なものに変化していくことが示された。 なお,上記の日本とスウェーデンにおける触法障害者の社会復帰支援についての検討結果は,海外福祉情報として執筆し掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り,刑余者及び地域生活定着支援センター支援員に対するインタビュー調査を行い,全国調査に向けた調査項目の選定作業に入っている。但し,全国調査を実施するところまで至らなかった。これは,最終年度に予定しているフランス視察の調整が順調であるため,現地の支援者に対するインタビュー調査だけでなく,質問紙調査についても実現可能性があるからである。質問紙調査による国際比較は,学術的に意義深いものの,文化的背景等の異なりに十分注意して質問項目を設定する必要があるので,時間をかけて精査する方針で取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年次は,地域生活定着支援センター全国調査及びフランス視察によるインタビュー調査を行う計画である。 全国調査については,現在,司法福祉専門職の参画のもと調査項目の精査を行っている。調査票が完成次第,発送回収を行う。 フランス視察については,大都市と地方都市における障害・高齢刑余者及び触法者支援の実地調査を行う目的で,Paris及びVannesを訪問し,支援者へのインタビュー調査を行う計画である。主に,アソシアシオンによる支援体制,労働環境について調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
全国調査を最終年次に行う計画に変更したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
郵送費,調査協力者への謝金等,当初の計画通り使用する。
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