研究課題/領域番号 |
15K04009
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
増田 公香 横浜市立大学, 国際総合科学部(八景キャンパス), 教授 (60316776)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 障害者虐待 / カリフォルニア州 / 成人保護サービス / 児童保護サービス / 虐待定義 / セルフネグレクト(self-neglect) / 社会的孤立(isolation) |
研究実績の概要 |
第一に、アメリカ・ロサンゼルスを中心に活動しているJSPACC(手をつなぐ親の会)の協力を得て50名の家族に対して障害者虐待の体験に関するアンケート調査をした。その結果、35名(有効回答率70%)から有効回答を得られた。「バカにされる」「冷たくされる」等の心理的虐待を「学校」で受けた回答者が7名(20%)と最も高く、次いで「サービス機関」が6%だった。第二に、アンケートの回答者のうち16名に対し各2時間程のインタビュー調査を実施し深堀調査を行った。その結果、カリフォルニア州では州独自のランターマン法を基軸に知的及び発達障害のある人々に対してアウトリーチ方式によるサービスがリージョナルセンターを中心に展開されていた。虐待や権利侵害に関しては、児童保護サービス・成人保護サービスを中核に通報システムが構築されていた。さらにDRCにより無料の弁護士相談サービスも展開していた。第三に、USCUCEDD(University Center for Excellence in Developmental Disability)を訪問しDr. Yinセンター長・Dr. Wheeler,等と議論した。又カリフォルニア州の公的機関であるSCDD(State Council on DevelopmentalDisability)及びランターマン・リージョナルセンターを訪問しカリフォルニア州全体の障害者虐待に関する法政策の実際を把握した。その結果、成人保護サービスにおける虐待定義が従来の身体的虐待、性的虐待、経済的虐待、心理的虐待、ネグレクトに加えセルフネグレクト(self-neglect)、遺棄(abandonment)、社会的孤立(isolation)も加わり拡大されていた。第四に、日本精神神経科診療所協会にアンケート調査の実施検討を依頼した。年度を挟むため平成30年度に実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に当初計画をしていたアメリカ・カリフォルニア州における障害者虐待の調査研究を実施することができた。アンケート調査及びインタビュー調査を実施した。また児童保護サービス及び成人保護サービスを基軸にカリフォルニア州における障害者虐待のサービス支援施策を包括的に理解することができた。第二にカリフォルニア州独自の知的発達障害の人びとに対するランターマン法を基軸にアウトリーチの方式で展開しているサービスの実際を把握することができた。第三にUSCUCEDD(University Center for Excellence in Developmental Disability)を訪問しDr. Yinセンター長・Dr. Wheeler,等と日本とカリフォルニア州の障害者虐待施策の相違点を議論し、今後も継続して助言等を頂くことになった。第四に又カリフォルニア州の公的機関であるSCDD(State Council on DevelopmentalDisability)及びランターマン・リージョナルセンターを訪問しカリフォルニア州全体の障害者虐待に関する法政策の実際を把握した。その結果、成人保護サービスにおける虐待定義が従来の身体的虐待、性的虐待、経済的虐待、心理的虐待、ネグレクトに加えセルフネグレクト(self-neglect)、遺棄(abandonment)、社会的孤立(isolation)も加わり拡大されている最近の動向を把握することができた。第五に日本精神神経科診療所協会にアンケート調査の実施検討を依頼した。年度を挟むため平成30年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方策としては次の点を計画している。 第一に、日本における障害者虐待の実態把握を実施する。日本において障害をもつ当事者及び家族の方々に対して障害者虐の実態把握を行う。具体的には障害者団体をとおしてアンケート調査実施の依頼を行い、障害をもつ当事者及び家族の視点から障害者虐待の実態把握を行う。その上で、昨年度実施したアメリカにおける調査等との比較検討を行い、さらにカリフォルニア州において虐待定義の拡大が展開されている中、日本における障害者虐待の実態を詳細に把握検討する。第二に、病院及び学校において障害者虐待の実態把握を実施する。 現在の障害者虐待防止法においては、病院・学校・保育園に関しては通報や通報に対する具体的対応が定められておらず、各々の管理者等に自主的な対応のみに留まっている。その一方で近年日本の精神病院における虐待事件等が発生している。また国連自由権規約委員会は日本の精神病院における虐待処遇の改善を求めている。このような背景を鑑み、精神病院及び学校において医師及び教員に対してアンケート調査を実施し、障害者虐待に対する意識調査を実施する。既に日本精神神経科診療所協会にはアンケート調査実施の意向を打診しており実施予定である。第三に、フィンランドにおいて障害者虐待の実態把握及び支援施策を理解する。フィンランドにおいて障害のある当事者及び家族から障害者虐待の実態把握を行う。またフィンランドの障害者虐待システムの実際を把握し、日本・アメリカとの政策の相違点等を比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に実施予定していた計画のうち、未実施の計画に関して平成30年度に実施する予定である。
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