2000年代以降のイタリアでは、民間市場の家事領域で介護労働に従事する外国人労働者が劇的に増加した。この事態はとくに受入れ国であるイタリアの移民政策と社会政策双方の直接―間接的な相互作用性によって誘起されてきた。他方、日本では2014年前後「介護労働の市場化と外国人化」について大々的な議論や特区での適用が急激な展開をみせている。そこで本研究では日本とイタリアの事例について、外国人介護労働者に対する移民政策と介護政策の相互作用、介護労働の市場化をめぐる政策動向、外国人介護労働者の技能評価の解明を目的とした。
研究の結果、日本とイタリアが介護政策においては介護の現物給付(日本)と現金給付(イタリア)主流の政策をとり、また外国人介護労働者については、厳格な入国前の技能・学歴要件と入国後の職業教育(日本)と入国前の技能・学歴要件が不在で、入国後に事後的に滞在就労を承認する制度利用の普及(イタリア)といった点で、入国前後に少なくとも二重の審査や技能習得を要する日本と、事後承認型のイタリアという点で対照的であることが明らかになった。また、こうした介護をめぐる政策様相の対象性は、世界的にみて最高比率の水準にある、高齢化、財政収支の赤字(対GDP)、社会保障支出における非現役(高齢者)への支出といった高い共通性があるにもかかわらず、対照的であることも明らかにし、これらをAsian Europe Journal (Springer)で論文発表した。 また、日本の事例に関しては、2017年以降、外国人介護労働者に対する入国管理政策が大転換し、技能実習制度下での技能や学歴要件のほとんどない状態の非熟練労働者の受け入れが開始されたほか、在留期間が実質的に無期限に延長できる在留資格「介護」が創設されたことを社会政策学会で報告した。
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