本研究の目的は第1に保育事業が果たした貧困予防に関する過去のエビデンスを収集、分析することであり、第2に「子どもの貧困」対策の1つとして再考するための歴史的な事実や知見を見出すことであった。主要な研究成果は次の3つである。 第1に神戸市職員・生江孝之は日露戦争時の出征軍人児童保管所、戦後の戦役紀念保育会を指導した。第2に内務省嘱託・生江は、保育事業を育児事業の経費節減と貧児の家庭養育を実現する国家レベルの社会政策構想に反映した。他方、第3に大阪市の財団法人弘済会は保育所家庭会を通して、家庭の養育や教育の相談に応じ、悪習慣の改善を促した。
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