本研究の目的は、高齢者が主体的に生きる社会を求めて、高齢者の自己決定を尊重する支援とは何かを明らかにすることであった。研究期間全体を通じた研究成果としては、1点目は、質的調査によって《肯定的な未来志向》《肯定的高齢者観》《コーピング能力》という主体的に生きている高齢者の共通項を明らかにした。2点目は、量的調査によって、外出の頻度の多く、肯定的高齢者観を持ち、金銭管理をし、身だしなみに配慮し、世間体を気にしない高齢者ほど、自分のことは自分で決めていた。専門職からの支援としては、3点目は、介護福祉士の支援では、質的調査によって27の概念が生成され《信頼関係の構築》《アセスメント能力》《ストレングス視点》《大切にしている支援》という4つのカテゴリーに分かれた。4点目は、量的調査よって、高齢者の自己決定を尊重する介護福祉士の支援の構造は、強みの把握、自己決定を引き出す支援、なじみの関係づくりから構成されていた。また、実践に対する振り返りの程度、新しいことに好奇心を持つこと等が、自己決定を尊重する実践に有意に関連していた。5点目は、量的調査よって、高齢者の自己決定を尊重する介護支援専門員の支援の構造は、情報収集、ストレングス視点、利用者と向き合う姿勢から構成されていた。また、仕事に対する有能感や実践に対する振り返りの程度が、自己決定を尊重する実践に有意に関連していた。これらの成果を実施計画に従って、①高齢期のしあわせのあり方に関するアンケート~自分らしく生きるためのお考えに焦点を当てて~、②ケアワークにおける高齢者の主体性を支援する研究~自己決定に焦点を当てて~「高齢者が主体的に生きる意味を考える」という2冊の報告書にまとめ、①「高齢者が主体的に生きる意味を考える」、②「高齢者が主体的に生きる社会を求めて~高齢者の思い、そして、専門職からの支援~」という研究報告会を2回開催した。
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