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2015 年度 実施状況報告書

道徳規範からの逸脱行為と匿名性

研究課題

研究課題/領域番号 15K04027
研究機関大阪大学

研究代表者

釘原 直樹  大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60153269)

研究分担者 植村 善太郎  福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20340367)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード八百長 / 匿名性 / 不正行為 / 社会的手抜き
研究実績の概要

本年度の研究としては第1に相撲について分析した。1949年から現在に至るまで(67年間)の十両と幕内の取り組みの全データ(12000件以上)を対象とした。2011年度に八百長問題が起こり、そのため春場所が中止された。そして5月には入場料を徴収しない技量審査場所が開催された。本年度は技量審査場所以前と以降の違いについて分析した。15戦全敗~15戦全勝の間のそれぞれの確率を計算して、その確率から現実のデータがどの程度乖離しているかに注目した。分析の結果、技量審査場所以前は、6勝9敗や7勝8敗の出現確率は理論値に比べて非常に低く、逆に8勝7敗は若干高かった。技量審査場所以降は、6勝9敗や7勝8敗の出現確率は以前より若干高くなり、8勝7敗は理論値と近い値になった。このことから八百長問題発覚の前後で、勝敗の出現パターンが明らかに異なっていることがわかった。また、実力が中程度の者の出現確率は相対的に少なく、相撲の世界は実力格差社会だということが示唆される。
第2に同調実験を行った。1950年代に行われたアッシュの同調実験の追試を行った。集団サイズの効果を見るために、実験参加者もサクラになった。実験は同性集団で実施された。最初2人集団から始めて1人ずつサイズを増やし最終的に8人集団になるまで実験を行った。その際、各サイズの最後の人が実験参加者となり、その他の人にはサクラの役割を果たしてもらった。実験の結果、次のことが明らかになった。1、Aschの実験結果と異なって集団サイズが4人を越えても同調率が高くなる。2、女性の同調率が高い、特に集団サイズが大きくなると女性は同調しやすくなる。3、高年齢の女性は特に集団サイズの影響を受ける。それに対して男性では若年者より高年齢者の方がかえって集団サイズの影響を受けない。以上の結果は現代の中高年と女性は集団圧力に弱い面があることを示している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度はアーカイブデータ分析に関しては相撲のデータに着目して行った。技量審査場所の存在はいわば、自然実験として捉えることも可能である。社会的手抜きや不正行為が監視の厳格化によっていかに変化するのか、そのヒントが得られたものとも考えられる。それから同調実験に関しては28年度に行うことを予定していたが27年度に前倒して実施した。28年度も引き続き、実験を続行するつもりである。

今後の研究の推進方策

相撲のデータに関しては今後、決まり手に注目して分析を行う。技量審査場所前後で決まり手の種類が異なるのか、詳しく分析するつもりである。それから同調実験に関しては、反応潜時計測のため実験参加者の前に衝立を置いた。そして実験参加者が立ち上がって、目視して、回答するまでの時間を計測した。この手続きはアッシュの実験と若干異なる。そのため本年度はアッシュと同じ状況(衝立なし)を設定して実験を行い、比較検討する。

次年度使用額が生じた理由

これまで複数回の同調実験を繰り返してきた。同調実験を実施するのに、集団サイズを7人に統一する必要がある。そして、1回あたりの実験費用が約7万円ほど必要である。本年度の残額である33,390円では1回の実験も行うことができないので、これを次年度に繰り越すことにする。

次年度使用額の使用計画

このオーバーした費用を次年度の同調実験で使用する。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (10件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 予知能力の存在の検討―ネガティブ刺激の事前回避―2016

    • 著者名/発表者名
      今村 夕貴・釘原 直樹
    • 雑誌名

      対人社会心理学研究

      巻: 16 ページ: 47-52

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 被害者への共感的観察が脆弱性認知に及ぼす影響―詐欺被害事例を用いた検討―2016

    • 著者名/発表者名
      大工 泰裕・阿形 亜子・釘原 直樹
    • 雑誌名

      対人社会心理学研究

      巻: 16 ページ: 21-26

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 災害被害者の責任帰属についての検証―テロは殺人とは違うのか―2016

    • 著者名/発表者名
      竹内 穂乃佳・釘原 直樹
    • 雑誌名

      対人社会心理学研究

      巻: 16 ページ: 27-32

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Effects of labeling and group category of evaluators on evaluations of aggression.2015

    • 著者名/発表者名
      Teraguchi, T., & Kugihara, N.
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 10 ページ: doi:10.1371

    • DOI

      10.1371

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 空間的距離の認知が社会的距離に及ぼす影響 ー外集団間の差異に焦点を当ててー2015

    • 著者名/発表者名
      武藤麻美・釘原直樹
    • 雑誌名

      応用心理学研究

      巻: 41 ページ: 207-216

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 精神障害者に対する社会的距離に影響する要因―統合失調症患者への認知における帰属複雑性と曖昧さ耐性の効果の検討―2015

    • 著者名/発表者名
      武藤麻美・釘原直樹
    • 雑誌名

      応用心理学研究

      巻: 41 ページ: 10-17

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Psychological distance and likeability of in-or out-group targets who hold different opinions2015

    • 著者名/発表者名
      Mami Muto, Naoki Kugihara
    • 雑誌名

      Psychologia

      巻: 58 ページ: 36-48

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Asch型同調実験(集団サイズ2人~8人)の30年ぶりの追試 現代の中高年と女性は集団圧力に弱い2015

    • 著者名/発表者名
      釘原直樹・寺口司・内田遼介・阿形亜子
    • 学会等名
      日本社会心理学会第56回大会
    • 発表場所
      東京女子大学
    • 年月日
      2015-10-31
  • [学会発表] 功利主義的義務感による利他行動2015

    • 著者名/発表者名
      清水計法・釘原直樹
    • 学会等名
      日本社会心理学会第56回大会
    • 発表場所
      東京女子大学
    • 年月日
      2015-10-31
  • [学会発表] 集団間のカテゴリーの重複が攻撃行動に及ぼす影響2015

    • 著者名/発表者名
      正高杜夫・釘原直樹
    • 学会等名
      日本社会心理学会第56回大会
    • 発表場所
      東京女子大学
    • 年月日
      2015-10-31
  • [学会発表] スポーツ集団における集合的効力感の評価形成過程2015

    • 著者名/発表者名
      内田遼介・釘原直樹
    • 学会等名
      日本社会心理学会第56回大会
    • 発表場所
      東京女子大学
    • 年月日
      2015-10-31
  • [学会発表] 被害者への共感的観察が詐欺に対する脆弱性認知に及ぼす影響2015

    • 著者名/発表者名
      大工泰裕・阿形亜子・釘原直樹
    • 学会等名
      日本社会心理学会第56回大会
    • 発表場所
      東京女子大学
    • 年月日
      2015-10-31
  • [学会発表] 恐怖管理理論に基づく募金行動促進要因の検討2015

    • 著者名/発表者名
      法卉・釘原直樹
    • 学会等名
      日本社会心理学会第56回大会
    • 発表場所
      東京女子大学
    • 年月日
      2015-10-31
  • [学会発表] 恐怖管理理論に基づく利他行動の促進要因の検討2015

    • 著者名/発表者名
      法卉・釘原直樹
    • 学会等名
      日本グループ・ダイナミックス学会第62回大会
    • 発表場所
      奈良大学
    • 年月日
      2015-10-11
  • [学会発表] 加害者は何を思う?攻撃行動に対する評価と評価推測に集団カテゴリーが与える影響2015

    • 著者名/発表者名
      寺口司・釘原直樹
    • 学会等名
      日本グループ・ダイナミックス学会第62回大会
    • 発表場所
      奈良大学
    • 年月日
      2015-10-11
  • [学会発表] 詐欺への抵抗はどのようにして生まれるのか?2015

    • 著者名/発表者名
      大工泰裕・釘原直樹
    • 学会等名
      日本応用心理学会第82回大会
    • 発表場所
      東京未来大学
    • 年月日
      2015-09-05
  • [学会発表] 集合的効力感の集団内分散の予測力に関する探索的検討2015

    • 著者名/発表者名
      内田 遼介・釘原 直樹・河津慶太
    • 学会等名
      日本体育学会第66回大会
    • 発表場所
      拓殖大学
    • 年月日
      2015-08-25
  • [図書] 腐ったリンゴをどうするか? -- 手抜きを防ぐ方策はある2015

    • 著者名/発表者名
      釘原直樹
    • 総ページ数
      202
    • 出版者
      三五館
  • [図書] 危機事態からの避難行動における意思決定 化学工場・研究所の事故対策と安 全管理2015

    • 著者名/発表者名
      釘原直樹
    • 総ページ数
      担当ページ 197-206
    • 出版者
      技術情報協会

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公開日: 2017-01-06  

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