人は自分の行動が他者に知られない場合、道徳規範から逸脱するような行動(不正行為)をすることがある。不正行為には様々なものがあるが、本研究ではプロ・スポーツの八百長や付和雷同的同調、服従現象などを取り上げ、不正行為が生じる条件を明らかにした。さらに他者の不正行為を発見した場合の攻撃や非難、内部告発についても検討した。プロ・スポーツの八百長問題に関しては相撲の技量審査場所以前と以降のデータを比較分析した。分析の結果、技量審査場所以前の八百長問題がマスメディアによって取り上げられた時期から、勝敗の出現パターンが変化したことがわかった。第2に同調実験を行った。実験の結果、次のことが明らかになった。1、Aschの実験結果と異なって集団サイズが4人を越えても同調率が高くなる。2、女性の同調率が高い、特に集団サイズが大きくなると女性は同調しやすくなる。3、高年齢の女性は特に集団サイズの影響を受ける。それに対して男性では若年者より高年齢者の方がかえって集団サイズの影響を受けない。以上の結果は現代の中高年と女性は集団圧力に弱い面があることを示している。第3に服従実験を行い、Burger(2009)タイプの実験(150Vまでで、実験を停止)やミルグラムの古典的実験結果との比較を行った。結果、わが国の服従率に関してはミルグラムやBurgerの研究結果より若干高いことが明らかになった。最終年度は、同調実験の追加分析として反応潜時の分析を行った。実験では反応潜時計測のため実験参加者の前に衝立を置いた。そして実験参加者が立ち上がって、目視して、回答するまでの時間を計測した。分析の結果、同調反応生起時の潜時は短く、また女性の潜時も短かった。すなわち他者に同調する場合は迷いの程度が少なく、そして女性の同調率と反応速度も大であった。
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