研究課題/領域番号 |
15K04029
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
増田 匡裕 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (30341225)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | グリーフケア / 対人コミュニケーション / 対人援助 / 医療従事者 / ソーシャルサポート |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究活動は、研究倫理委員会(Institutional Review Board)の整備と、研究のオーディエンスの確認という極めて基礎的な準備活動に終始した。本研究の主たる目的として、社会心理学の知見を医療従事者に供給し、医療系の研究者及び実践家とのアクティヴな交流を作り上げて、学際的な研究分野を構築することが挙げられる。従って、医療従事者が講読する学術誌への投稿や学会大会への発表が必須である。医療系の学術誌に投稿するにはIRBの審査を経ることが条件づけられていることが多いが、研究代表者の所属している大学には全学のiRBは設置の予定がなく、所属部局も同様である。従って、前年度より最小単位の教育組織である「コース」単位でIRBを設置し、本年度より運営を始めた。教育組織おけるIRBであるため未熟な学部学生の卒業論文研究の審査が主となったが、そのため研究倫理審査の基準を定める入念な議論が可能となった。しかしながら、IRB運営が軌道に乗ったことのみが成果に終わってしまい、本研究の審査には至れなかった。 本研究のオーディエンスの確認のため、本研究の先行研究を新たな理論的枠組みから再分析したものをカナダで開催された国際学会で発表し、複数の国の参加者から先行研究のポテンシャルを指摘され、それを容れて本研究の方針を修正した。また、これまでラポールを築き上げてきた自助グループへの参加や、グリーフケアのワークショップ運営を通じて、現場の声と本研究への期待を得るという研究活動を続行した。これらの準備活動は、本当に現場に寄与する研究に不可欠である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究倫理委員会(IRB)メンバーでもある同僚の健康状態が想定以上に悪化し、IRBの運営が困難になった時期があったことに加え、同僚の担当授業を過重に担当することを余儀なくされて、研究に対するエフォートが年度初頭に比べて遥かに下回った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の成果の将来の社会貢献を考えれば、医療系の学会で通用する論文にまとめる必要がある。そのためには研究倫理委員会(IRB)の設置されている研究機関に所属することが先決と考え、医療系大学の保健看護学部に平成29年6月1日より異動する。異動先では、看護学・公衆衛生学の同僚とともにディスカッションを重ね、遅れている本研究の計画のブラッシュアップをした上で、IRB審査を経て、本年度内にデータ収集を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究においてデータ収集をするためには、研究倫理委員会(IRB)による承認が不可欠である。大変遺憾ながら、高知大学には全学レヴェルでの委員会は存在せず、その意義も認められていない。人文社会科学系においても、10年前に頓挫している。従って、研究組織ではないものの教育組織としての最小単位である「人文科学コース」でIRBを設置した。しかしながら、教育組織としての運用が優先されることで研究の審査をする時間的余裕が生まれなかった。さらに、人員の限られている中で委員の中に健康状態が急速に悪化した教員がいたため、委員会の機能を研究まで拡充することができなかった。IRBの現場から、研究を年度内に中断せざるを得なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究代表者は、IRBが設置されている大学に平成29年6月1日付けで着任する。これによって、遅れていた計画を再開する目処が立った。またこの異動により、これまでラポールを形成していた医療従事者やピアサポートグループとの連携がしやすくなり、データ収集のみならずデータ分析においても、分析補助者を雇用する機会が得られた。研究ネットワークの再構築に旅費・謝金を用いる傍ら、予定していた質問紙調査の調査票をブラッシュアップして12月までの配布回収を実施する。
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