研究課題/領域番号 |
15K04030
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
志堂寺 和則 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (50243853)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 運転挙動計測 / 運転シミュレータ開発 / 高齢ドライバー |
研究実績の概要 |
本研究は、高齢運転者による交通事故を減らすことを目的として、ドライビング・シミュレータならびに実車を運転しているときの高齢運転者の運転挙動特性を抽出し、高齢運転者の運転挙動の改善方法について検討するものである。 ドライビング・シミュレータに関する運転挙動計測システムについては、引き続きシステムの改良を続け、より高精度に運転者の注視対象が自動抽出できるようになった。走行場面についても改良し、より日常の運転場面に近い状況で実験ができるようにした。高齢者と非高齢者で比較実験を実施した結果、高齢運転者特有の運転挙動をいくつか抽出することができた。実験結果の一部については、学会発表を行った。 実車を用いた運転挙動計測システムについては、昨年度のシステムで問題であったアルゴリズムの見直し等を行い、処理の高速化を実現した。その結果、センサのサンプリング周波数を上げることができ、関連して一部計算方式の変更を行い、より高精度でデータが取得できるようになった。自動車学校の教習コースで高齢者と非高齢者で同一のコースを走行してもらい、運転挙動の比較実験を実施した。その結果、高齢運転者の危険性を示唆する結果を得ることができた。 運転余力計測システムについては、前年度の研究成果を学会発表するとともに、前年度開発した視野を制限して運転挙動を計測するシステムに加えて、眼球運動は計測しないが、幅広い場面に対応できるように諸パラメータを簡単に変更することが可能なより汎用性があるシステムの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
修正計画では計測システム開発は7月迄としていたが、より高精度なデータ取得できるように改善に努めたため、実際には実車タイプで10月、ドライビング・シミュレータタイプで12月までかかることとなった。予定よりも時間はかかったが、当初予定していたレベルでデータ取得が可能となるようなシステムを開発することができた。 計測システム開発終了後は、自動車学校様にご協力いただき、両システムを用いて、高齢者のデータならびに比較対象として非高齢者のデータの収集を行った。解析の結果、どちらのシステムにおいても、当初想定していたような高齢運転者の危険性を示す結果を得ることができた。ただし、取得したデータにはさまざまな交通場面のものが含まれているが、現在までに解析できたのは数値化しやすい交通場面のみであり、その他の場面についてどう数値化するのかが課題として残った。 また、研究を進める中で、高齢者の場合は若い人と異なり眼瞼下垂等により眼球運動の計測が不可能な場合が多々あることが判明した。運転余力計測システムおいては眼球運動を計測し視野制限をおこなう計画であったが、このこともあり、眼球運動を計測しないタイプのシステムも追加で開発した。このシステムは、ドライビング・シミュレータ運転中にランダムに刺激が提示され、刺激に対してステアリングに付属のボタンで反応してもらうタイプのものであり、刺激の提示位置などがパラメータを設定するだけで簡単に変更できるようにしている。解析部分については、平均反応時間といった主たる測定項目は求めることができるが、もう少し細かく解析結果が出るようにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
自動車学校様の協力で得たデータのうちの未分析部分について解析を行う。実車運転中の挙動の場合は見通しの悪い交差点での運転挙動しか分析できていないため、他の走行区間において、どういった交通場面で何に注目すれば高齢者の特徴が出ているのかという視点から取得データを見直し、可能な限り多くの高齢者の特徴を抽出できるように努める。ドライビング・シミュレータについても、解析項目の追加を試みる。両システムともに、すでに解析している交通場面については、高齢者の危険運転の特徴がいくつか出ているので、より詳細にデータを見直すことで、さらに高齢者の危険な運転の特徴が抽出できると期待できる。解析結果がまとまり次第、学会発表等をおこなう。さらに、結果をフィードバックすることで運転が改善されるものかどうかについての検討を実施する。運転が改善されるような項目とそうでない項目とに分かれるのではないかと予想をしている。そういったところから、高齢者の安全運転教育について、新しい指導方法が提案できるのではないかと考えている。 眼球運動を計測しないタイプの運転余力計測システムについては、解析結果がもう少し細かく得られるように改良をしたうえ、高齢者ならびに非高齢者でデータ収集を行う。すでに、自動車学校様から実験協力の内諾を得ているので、大学所属部局の実験倫理委員会の実験実施承認が得られ次第、実験を実施する。こちらについても、可能な限り早くデータをまとめて、成果発表をおこなう。
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