研究実績の概要 |
本年度は,実証的根拠を欠いた信念が受容される過程について,二重過程理論にいう直観-分析(内省)的な認知スタイルと,文化心理学のいう包括-分析的認知スタイルの相互作用について,取得済みのデータを用いた再検討をするとともに,非実証的信念と同様の認知過程が関与していると考えられている「それらしく見える戯言 (pseudo-profound bullshit, Pennycook et al., 2015)」の受容についても,2つの認知スタイルとの関連を検討した。 それらしく見える戯言とは,文法構造や個々の語の意味については問題はないが,全体を通すと意味が通じなくなる一方で,一部の人が,そこに何らかの深遠な意味を見いだしうる文言(例 隠された意図は並ぶ物のない抽象美を変貌させる)を指し,超常信奉や陰謀論などの非実証的信念と同様に,内省的思考との間で負の関連が見られることが明らかにとなっている。加えて,ランダムなパターンの中に,意味のあるオブジェクトを見いだすパターン錯覚とも関連することが示されている。 本研究では,非実証的信念および戯言の受容について,内省的思考の効果と,それが文化的認知スタイルによって調整されるかどうかの検討を行った。その結果,超常信奉,疑似科学信奉,および戯言に対する受容の判断は,全体としては内省的思考傾向とは負の相関を示すものの,内省的思考の効果は文化によって異なり,特に西洋圏の参加者においてその傾向が強いという結果が共通して見られた。 本研究の成果の一部は国際学会等で発表された。さらに,全体の成果をまとめた論文の執筆を行った。現在は投稿のための最終準備中となっている。
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