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2017 年度 実施状況報告書

グローバル・キャリアの転進:アジア系医療従事者の心の動きとマクロ環境

研究課題

研究課題/領域番号 15K04035
研究機関桜美林大学

研究代表者

浅井 亜紀子  桜美林大学, 言語学系, 教授 (10369457)

研究分担者 宮本 節子  兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (60305688)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワードインドネシア人 / 外国人看護師 / 外国人介護福祉士 / 異文化接触 / 主観的ウェルビーイング / 定住化
研究実績の概要

(1)国家試験合格後に日本で働いているEPAインドネシア人の定住化の実態:定住化には家族としての主観的ウェルビーイング(Subjective well-being, SWB)が重要であった。SWBの構成要素として「職場での自己効力感」「家族の生活の安定」「家族の宗教実践の継続」が関係していることがわかった。3つ目の宗教に関し、熱心なイスラム教徒である家族は、子どもの成長に応じたイスラム教育を日本で実施することに困難を感じていた。SWBへの関与因としては、マイクロレベルでは職場や学校などの人間関係、メゾレベルでは、病院、学校、宗教コミュニティ、マクロレベルでは政府機関や自治体のサポートが関係していた。インドネシアでは一般的に、30歳までに結婚や子どもを産むことを求める宗教・社会的規範が強いが、インドネシア人女性の合格後長期的滞在する事例が少数あった。独身女性の長期滞在を可能とする要因には母国家族への経済支援が必要ないこと、感情労働へのストレス対処を効果的に行う旅行や趣味、Facebook等のメディア活用による対人ネットワークを有することがわかった。
(2)研修終了後帰国後のキャリア展開:2017年3月に行ったフィールド調査も含め分析を行った。EPA介護福祉士の場合、帰国後の職業は、日系企業が8人(44%)と最も多く教師は3人(17%)商売が3人いた。元帰国者のキャリア選択に影響する心理要因は①日本語や日本とのつながりへの欲求、②自身と家族のウェルビーイングへの欲求、③経済的安定への欲求がある。日本での快適な生活がこの欲求を強めている。環境要因は、①日系企業の元EPA人材への需要の高さ、②インドネシアの職業環境(報酬の低さ、家庭介護中心ゆえ介護人材の国内需要の低さと送り出す人材養成ニーズの高さ)、③家族を重んじる伝統、④インターネットの普及、である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2017年度は、EPA1陣、2陣を中心に、国家試験合格後の定住化の条件について、介護福祉士のケース、独身女性の事例について引き続き面接を行い、分析結果を、学会で発表した。看護師については、来日後候補者としての職業アイデンティティのショックとその対処について論文が掲載され(質的心理学研究)、合格後に家族を呼び寄せた1事例の時間軸による変化について論文が掲載された(桜美林大学言語文化紀要)。しかし、看護師全体についての定住化の要因については、分析結果を次年度に学会発表を延期した(異文化間教育学会)。
また、帰国後の職業選択については、2016年度3月にインドネシアで行った現地フィールドワークの記録をまとめ、分析を進めた。元介護福祉士の帰国後のキャリアについては分析を終え学会発表を行った(日本社会心理学会)が、元看護師の帰国後のキャリアについては、次年度に持ち越す。
学術書としてまとめる準備を進めているが、上記の学会発表予定の内容を含め、次年度進めていく。

今後の研究の推進方策

国家試験合格後の日本での定住化について、看護師の事例の発表、また、元看護師の帰国後のキャリアについても発表をし、書籍にまとめていく予定である。
合格後の長期化に伴い、主観的ウェルビーイング(SWB)の概念を用いることが有効であることがわかり、異文化接触研究におけるSWBの応用について、理論的に考察を進める。また、書籍としてまとめていく上で、異文化接触研究(外国への移動と帰国後)の理論、医療人材の国際移動についての文献についても、日本、海外とも整理してまとめ、本研究の位置づけ、また貢献を明確にする。

次年度使用額が生じた理由

看護師(合格者)の定住化に向けての分析結果、および、帰国後の職業選択の現状を異文化理解教育学会で発表予定。また、これまでの科研(3つ)をまとめて、学術書を書く予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 職業アイデンティティ・ショックと対処方略―来日インドネシア人看護師候補者の自己をめぐる意味の再編過程2018

    • 著者名/発表者名
      浅井亜紀子
    • 雑誌名

      質的心理学研究

      巻: 17 ページ: 185-204

    • 査読あり
  • [雑誌論文] インドネシア人看護師家族の日本滞在の長期化と主観的ウェルビーイング―職場、学校、地域との関わりでの情動体験―2018

    • 著者名/発表者名
      浅井亜紀子・箕浦康子
    • 雑誌名

      桜美林大学言語文化研究

      巻: 第9号 ページ: 77-98

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 日本の看護師国家試験合格後のインドネシア人看護師の職場と家族の課題2017

    • 著者名/発表者名
      浅井亜紀子・モハマド ユスプ
    • 学会等名
      異文化コミュニケーション学会プログラム
    • 招待講演
  • [学会発表] How to Cope with Threat to One’s Occupational Identity: Psychological Reorganization Processes of Meanings Related to Self among Indonesian Nurse Candidates in Japan2017

    • 著者名/発表者名
      Akiko Asai
    • 学会等名
      International Academy for Intercultural Research
    • 国際学会
  • [学会発表] インドネシア人女性看護師のキャリア展開2017

    • 著者名/発表者名
      宮本節子・浅井亜紀子
    • 学会等名
      異文化コミュニケーション学会年次大会
  • [学会発表] 異文化での定住に向けて:その実態と関与因 ―EPA 介護福祉士候補者として来日したインドネシア人の場合―2017

    • 著者名/発表者名
      箕浦康子・浅井亜紀子
    • 学会等名
      日本社会心理学会年次大会
  • [学会発表] 異文化体験と帰国後のキャリア ―元EPA介護福祉士候補者として来日したインドネシア人の場合―2017

    • 著者名/発表者名
      浅井亜紀子・箕浦康子
    • 学会等名
      日本社会心理学会

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公開日: 2018-12-17  

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