本研究は、リーダーシップの文脈において制御適合がモチベーションに与える影響を検証した。制御適合とは、制御志向(促進 vs. 予防)と目標追及の方略(熱望 vs. 慎重)組み合わせによって決定される。すなわち「促進 & 熱望」そして「予防 & 慎重」のが組み合わせが制御適合である。制御適合の状態にある個人は課題や仕事へのモチベーションを強めると考えられている。 我々は、2015年度~2016年度における研究から、制御志向の状況的に操作するためにメッセージ刺激を構築した(研究1)。メッセージ刺激は、予防焦点メッセージ12項目と促進焦点メッセージ12項目から構成される。さらに、これらのメッセージ刺激を使用して、リーダーの観点から制御適合の効果を検証した(研究2)。その結果、リーダーが部下に送るメッセージが促進焦点である場合、リーダーは熱望方略と選ぶ傾向を示した。一方、メッセージが予防焦点である場合、リーダーは慎重方略を選択する傾向が見出された。なお、熱望方略と慎重方略は、フレーミングの観点から操作した。熱望方略がポジティブ・フレーミングであり、慎重方略がネガティブ・フレーミングである。 2017年度は、研究2を発展させた実験を実施した(研究3)。研究3は、研究1で見出されたメッセージ項目を使用して、フォロワーの立場から制御適合がモチベーションに与える効果を検証した。研究3はリーダーの立場から制御適合を検証した研究2に対置される。本研究の主な知見であるが、促進焦点と熱望方略の間に適合が見出された。しかし、予防焦点と慎重方略の間には制御適合は見出されなかった。 研究3は、制御適合の枠組みを適用することによって、リーダーシップとモチベーションを接合する可能性を示唆する。今後、さらに研究知見を重ねることによってリーダーシップとモチベーションを統合する研究が期待できる。
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