研究課題/領域番号 |
15K04038
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研究機関 | 聖心女子大学 |
研究代表者 |
小城 英子 聖心女子大学, 文学部, 准教授 (60439510)
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研究分担者 |
坂田 浩之 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 准教授 (70340627)
川上 正浩 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 教授 (40242789)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 不思議現象 / 態度 / 批判的思考 / 精神的健康 |
研究実績の概要 |
2015~2016年度は、第1に不思議現象に対する態度のうち、特に懐疑的態度を細分化するために尺度の改訂(APPle改訂版)、第2に批判的思考を測定するための測度(批判的思考力テスト)の開発を行ったが、これを受けて2017年度は両者の関係について検討した。その結果、批判的思考力テストのいくつかの課題で不思議現象信奉者の批判的思考力が低いことが示された。また、回答者は、真剣に検討したうえで不思議現象を信奉している「信奉層」、表面的にエンターテイメントとしてこれを楽しむ「娯楽的享受層」、真の批判的思考を獲得していて不思議現象に対しても一概に否定せず、そのメカニズムを論理的に解明することに面白さを見出している「批判的懐疑層」、実は不思議現象に対して恐怖を抱きつつ、それを打ち消すために盲目的に不思議現象を否定、反動的に信奉者を批判する「盲目的懐疑層」、すべての社会事象に対して無関心な「無関心層」、全体的に中間に位置していて特徴のない「一般層」に分類された。このことから、不思議現象に対する態度をよりきめ細かくとらえることに成功すると同時に、真に批判的思考を獲得しているからこそ、不思議現象に対しても多面的にとらえる態度や、批判的思考が低く、精緻な情報処理を回避して不思議現象を否定する態度など、多様な態度があることが明らかにされた。 次に、不思議現象信奉と精神的健康の関連について検討を進めた。まだ予備的な調査の段階であるが、占い・呪術嗜好性やスピリチュアリティ信奉とレジリエンスとの正の関連や「盲目的懐疑層」においてレジリエンスが低い可能性が示された。批判的思考との関連も合わせて考えると、不思議現象信奉によって結果的に精神的健康が維持されている可能性や、批判的思考の低さが恐怖や不安などのネガティブな感情を喚起させ、それが結果的に精神的健康の低さと結びついている可能性が示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は3カ年計画としていたが、尺度の改訂で予定通りの結果が得られず、2016年度~2017年度にかけて修正を行ったため、研究期間を1カ年延長した。その結果、精神的健康について十分に検討する時間を得ることができ、順調に研究を遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、不思議現象信奉と精神的健康との関連について、2017年度までの分析結果を学会で発表するとともにさらにデータ収集を行い、深いレベルの分析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は3カ年計画であったが、不思議現象に対する態度の新尺度の妥当性検証において、個人特性との相関関係がほとんど認められず(2017年度第58回社会心理学会にて発表)、既存のデータの再分析ならびに追加調査を行うこととし、研究の進捗状況に合わせて研究期間を1カ年延長した。このことにより、3年目の残額を4年目の経費として繰り越すこととした。
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