研究課題
組織的公正と組織コミットメントの2つの構成概念を導入した拡張版職業的自尊心-安全行動意思モデルにもとづく質問紙調査を4業種4組織(従業員合計1800名)に対して実施し(2013年~2015年)、分析を行った。その結果、1.組織的公正は職業的自尊心および組織コミットメントに対して仮説どおり促進効果を持っていた。2.組織的コミットメントが業務推進意欲の技量工夫因子と作業予定厳守因子をともに促進していたのに対し、職業的自尊心は技量工夫因子を促進し作業予定厳守因子を抑制するという効果を持っており、作業安全における職業的自尊心の独自の効果が検証された。3.拡張版職業的自尊心-安全行動意思モデルは他業種において有効であることが示された。(芳賀)組織における公正を測定したデータについて共分散構造分析による分析を行い、仮説通り「分配的公正」「手続き的公正」「相互作用的公正」「情報的公正」の4因子構造であることが示された。項目反応理論による分析結果では、それぞれの因子を構成する項目群の一元性が認められた。(田中)仕事に対する誇りを測定したデータをもとに分析を行い、4因子構造であることが示された。この誇りの形成には、個人の仕事に対する個人の投資量、会社における理念の浸透、および会社に対する社会の評判が強く関連していた。また、誇りの形成の抑制に、リーダーの非即応的な賞罰が関連していることが示唆された。(山浦)
2: おおむね順調に進展している
拡張版職業的自尊心-安全行動意思モデルが多業種において汎用性があることが認められた。また、職業的自尊心が従業員の自律性を促進することから、レジリエンス特性を伸長し、SafetyⅡと呼ばれる新しい安全態度に寄与する可能性について、考察が深められた。ついで、組織間の差異、および従業員の特性(職位、在職年数、雇用形態、など)における差異についての分析を進めている。職業的自尊心尺度の内容的妥当性の検討のために、安全優良作業者のヒヤリング調査などを検討しており、2016年度の実施を予定している。組織的公正の因子構造について知見を重ねることができた。ついで、これらの因子が及ぼす効果の検証とメカニズムの理論的検討を行う予定である。
拡張版職業的自尊心-安全行動意思モデルにもとづいたweb調査により、モデルの汎用性および従業員特性の効果を検討する。また、協力企業における調査において、上司のリーダーシップ特性と組織的公正の効果について検討する。文献研究により、職業的自尊心と仕事の誇り、業務意欲の自律性、従業員個人のレジリエンス特性と組織のレジリエンス特性をレビューする。加えて、職業的自尊心と仕事の誇りの因子構造、組織的公正の因子構造とその効果、等を議論のテーマとし、安全行動の要因モデルの理論的枠組みを検討する。品質管理行動へのモデルの展開を視野に入れ、最終年度の調査を企画する。
海外出張に係る旅費が予定より少なく済んだことと,RAの勤務時間が予定より少なかったため。
平成28年度に実施する調査の規模を拡大し,その分析のためのデータ入力委託費とRA人件費を増額する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
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