研究課題/領域番号 |
15K04041
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
西田 公昭 立正大学, 心理学部, 教授 (10237703)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マインドコントロール対策 / 詐欺対策 |
研究実績の概要 |
計画1:マインド・コントロール影響の被害実態の把握については、いくつかの破壊的カルト脱会者、ないし悪質な業者による詐欺的な被害者など数名に実施できた。ある宗教カルトの脱会者の40歳代男性は、両親の入信によって信仰を持たされたが成人する頃には、矛盾を受け止め、家族との関係を懸念しながら脱会を決意した心理過程、また子どもの頃に受けた人権侵害なが面接によって明らかになった。また、監禁事件の被害を受けた少女がその環境から脱出する心理過程を検討した。さらには、霊能師を信じて金銭搾取の被害にあった50歳代男性から、巧妙な情報操作の技術からその霊能師を信じるに至るメカニズムを理解する面接調査を行うことができた。その結果、霊能力のトリックを巧みに用いて信じさせるコミュニケーション過程が明らかになった。 計画2:カルタを用いたゲームの作成については、詐欺被害の予防対策のための和歌形式のカルタ・ゲーム「百サギ一蹴」を完成させ、その基礎実験を実施した。基礎的なデータ収集のため、報酬の有無とスキルチェックの測定時期(1回目、2回目、3回目)を独立変数、実験参加者のスキルチェックにおける詐欺対策スキル得点を従属変数とした2要因混合計画の実験を大学生32名に実施した。また、別の要因を組み込んで、さらに16名のデータを収集し、対戦相手の有無と試行回数(1回目、2回目、3回目)を独立変数、試行回数間の得点の差(変化量)と参加者の詐欺・悪質商法の対策への意識を従属変数とした、二要因混合計画で実施された。対戦相手がいない状況においては、試行回数が増えるごとにスキルチェック得点は有意に高くなった。次に、対戦相手の有無と事前のスキル得点を変動因として共分散分析を行い、カルタの教育効果が認められることを確認した。なお、金融機関の詐欺対策を理解するため、銀行員(約400名)や高齢者(約100)に対する質問紙調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画予定の実証研究は、おおむね予定通りに進展している。計画1のマインド・コントロール影響の被害者の心理過程は、さらに異なるタイプが研究できた。計画2のカルタ研究では、社会実験に協力してくれる自治体や消費者団体との連携も可能性を高めてきたためである。しかし、多重な職務依頼への対応で時間的な圧迫が多くなり、研究遂行の時間と体力確保が課題になっている。
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今後の研究の推進方策 |
計画1:マインド・コントロール被害者への面接を増やしつつ、その被害心理の過程の理論化をさらに発展させる。特に被害者がどのような過程で、だまされたことに気づき、それを受容していくのかの過程についての検討を深める。 計画2:今年度の目的は、社会実験を実施することで実用的な効果を確認することである。具体的には、これまでの成果を基に、一般的な実施プログラムを感生成させる。その後、詐欺対策などで集まった高齢者を中心に、実施プログラムに沿ってカルタ「百サギ一蹴」を実施してもらい、同時に実験データを収集し、分析、検討を行う予定である。なお、その折に何らかの不測の事態が生じた場合、それに対処して実施プログラムを改良して、さらなる実験を計画する。
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次年度使用額が生じた理由 |
職務の関係で多忙であったことで、海外出張が実施できなかったことが原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、成果発表のための海外出張、国内での実験データ収集に旅費が必要となる。また、実施においても謝金が生じること、データ分析用のパソコンが老朽化してきたために新たに購入が見込まれる。
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