28年度までに、学生を用いた実験法による検討を行い、開発した詐欺予防対策カルタ「百サギ一蹴」の効果は認められることを確認した。そこで29年度では、実験対象者を、高齢者を含む一般的な社会人に拡張し、またより実際的なゲーム実施場面における現場実験をも試みた。 実験は、まず仙台市において、26名が参加し、2名1組で行われた。この実験では、ゲーム回数を1回と2回の条件に分けて、非競争モードで検討した。なお後に福島市においては30名が参加したが、ここでは皆が1回条件の参加者であった。統計的に検討したところ、回数条件の差は認められなかったが、ゲーム前後での詐欺対処スキルは向上したことは確認できた。また横浜市では、実験では、実際の詐欺対策講演会の聴衆に対してゲーム参加を依頼した実験をおこなった。ここでは競争モードで行い、景品を出すことを約束して42名に実施した。ここでも詐欺対処スキルの向上は認められたが条件間の差異は認められなかった。 今回、実施した社会実験では、詐欺対策に対する参加者の動機づけのレベル、事前のスキルの高さ、さらにはカルタというゲームに対する関心の程度など、条件統制が十分にできなかったため、さらなる検討が望ましいとはいえる。また景品に魅力によってゲームへの動機を高めることができなかったと考察できるので、もっと魅力的な景品を提供するといった検討が望まれるが、開発したカルタによるゲーミングはスキルアップに効果が認められ、実際の利用が有効な詐欺予防対策になると判断できる。また参加者は、実験後の評価は高く、自由記述においても、役に立つとか、楽しかった、難易度も丁度いい、また参加したい、などと述べる人も多く、新たな詐欺予防対策ツールとして実際の使用に期待できるといえる。なお、ゲームに用いた和歌の増量や質的な改善によって、より有効な発展も期待できよう。
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