研究実績の概要 |
本研究では、目下国家資格化が推進されつつも離職率の高さが憂慮される動物看護師(Veterinary Technician, 以下VT)を主な対象とし、終末期のペットケアの実態やVTのケア観、ケア方針や実施に際し飼い主とのあいだに生じる諸問題の把握により、飼い主と獣医師とを媒介するVTの感情労働のあり方を示すこと、また、超高齢社会においてニーズの高まる終末期ペットケアの現状と問題の把握を目指してきた。 最終年度である2018年度は、VTの終末期ペットケアの実態をさらに明らかにするべく、短期間から中長期、生涯にわたってペットを預かり、主に高齢ペットの終末期ケアを行うために開所され、昨今その数を増している国内の老犬ホームの現状を把握し、そこに勤務するVTが従事する終末期ペットケアのあり方や問題点等の現状も調査対象に含めた。 半構造的面接調査や参与観察等にて、関係者及び終末期ペットケアを過去及び現在経験する飼い主も調査対象とした。その結果、動物病院では担いきれない、終末期に要介護状態のペットの自宅介護を一人で抱え込む傾向のある飼い主の心身の苦悩の深さ、高齢飼い主の強い悲嘆、ペットロスの重篤さ、それに対峙するVTの苦悩、共感や傾聴、想像力等コミュニケーションスキルの必要性などが顕在化した。 さらには、勤務年数7年以上のベテランVTを対象に「患者動物との死別・安楽死経験」「死生観と安楽死観への影響」「死別を含む終末期ケアに関わる感情労働の現状、対処法」「終末期ケアに際してさらに学びたい知識」について関連体験とのかかわりから聞き取り調査を行った。その結果、ベテランでも職場での死別・安楽死件数は多くなく、死への恐怖や不安を感じる者もおり、経験不足の若手が抱える感情労働を懸念していた。在学中および卒後の教育プログラムにおいて、追体験の機会増加や具体例の多用などの工夫を増やす必要性が示された。
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