研究課題/領域番号 |
15K04045
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
畑中 美穂 名城大学, 人間学部, 准教授 (80440212)
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研究分担者 |
松井 豊 筑波大学, 人間系, 教授 (60173788)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 惨事ストレス / 精神的健康 / 災害救援者 / 神経心理学的検査 |
研究実績の概要 |
2018年10月下旬から2019年1月にかけて,A県内の14の消防本部を対象として,本部ごとに1~7日間にわたって訪問し,一昨年度(2016年度)の第一調査および昨年度(2017年度)の第二調査に参加した消防職員231名(新人職員102 名,先輩職員129 名)の追跡調査2(第三調査)を実施した。第三調査では,第一調査および第二調査と同様の神経心理学的検査(タッピングスパン課題順向・逆向,数唱課題順向・逆向)と適応状態等を測定する質問紙調査を個別に実施した。 神経心理学的指標が消防職員の適応状態に対して脆弱性要因あるいは予防要因となっている可能性を検討するために,第一調査で測定された神経心理学的指標のそれぞれと職務ストレッサー,およびこれらの交互作用項を説明変数とし,追跡調査で測定されたIES-RもしくはGHQ-12を基準変数とする階層的重回帰分析を行った。分析は,新人職員と先輩職員とに分けて実施された。分析の結果,IES-RとGHQ-12のいずれを基準変数とした場合にも,新人職員において数唱課題逆向(以下,DBと表記)と職務ストレッサーとの交互作用が有意であり,第一調査時点でのDBの成績が高い場合には,その後の職務ストレッサーが高くなっても,外傷性ストレス症状や精神的不健康症状が生じにくいと解釈された。この結果から,神経心理学的指標(DB)が消防職員の適応状態の予測因となる可能性が示唆された。 本年度は,日本トラウマティック・ストレス学会第17回大会,日本心理学会第82回大会,および39th International Conference of the Stress and Anxiety Research Society (STAR) にて研究成果発表を行い,神経心理学的検査と適応指標との関連,および分析方法について,臨床心理学や認知心理学の専門家と情報交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一昨年度の第一調査の実施が当初計画よりも3ヶ月ほど遅れていたため,調査間隔の確保上,昨年度の第二調査の開始時期が遅れた。また,調査協力を得た消防本部の都合により第二調査の実査期間が長くなった。これらの理由から,第二調査の終了時期が当初計画よりも半年ほど遅れ,昨年度末に開始予定であった第三調査を本年度実施することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
進捗はやや遅れたものの、当初計画の通り、三回の縦断的測定を完了した。次年度は、縦断データの詳細な分析を行い、調査協力を得た各本部に成果報告を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は第三調査(追跡調査2)を完了したが、詳細な分析および調査協力を得た本部への成果報告は次年度に実施することとなった。そのため、今年度は,データ整理や分析補助のためのRA雇用の謝金が当初予定よりも少なくなり、成果報告のための出張旅費は発生しなかった。 (使用計画)次年度(2019年度)は、第一調査から第三調査までの測定データを合わせた詳細な分析を行い,協力を得た各消防本部に対して成果報告を行う。これにかかるRA雇用の謝金と出張旅費に次年度使用額を充当する。
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