A県内の14の消防本部の消防職員231名(新人職員102 名,先輩職員129 名)を対象として,2016~2018年度にかけて実施した縦断調査の解析を行った。具体的には、2016年10月より、10~12ヵ月の期間を空けて同一対象者に3回の質問紙調査と神経心理学的検査(タッピングスパン課題順向・逆向,数唱課題順向・逆向)が実施された。質問紙ではK6、GHQ-12、前回の調査以降の惨事経験の有無等が調査された。 第3調査の適応指標(IES-R、K6)を基準変数とし、第1調査で測定された神経心理学的指標とレジリエンス、第2調査で測定された配属後のストレッサーとソーシャル・サポートを説明変数とした重回帰分析を実施した。その結果、新人職員のK6は、配属前のディジットスパン順向得点と配属後のストレッサーに規定されており、ディジットスパン順向得点が高いほど、また、ストレッサーが低いほど、適応状態が良好であった。IES-Rに対しては、いずれの説明変数も投入されなかった。これらの結果から、新人消防職員に関して、現場配属後のうつなどの一般的な適応状態に関して、配属前に測定された神経心理学的指標による予測が可能であることが示唆された。 本年度は,日本トラウマティック・ストレス学会第18回大会,日本心理学会第83回大会にて研究成果発表を行い,神経心理学的検査と適応指標との関連,および分析方法について,臨床心理学や認知心理学の専門家と情報交換を行った。 また、調査協力を得た消防本部と消防学校に対する成果報告の準備を行った。
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