本年度は、予測の際に喚起されると考えられる思考と感情に着目し、2つの実験を行った。 第一の実験は予測の際の情報量の差異が与える影響に関する実験である。この実験では、実際のFIFAワールドカップの試合に賭けを行ってもらった。その際、賭ける前に試合に関する情報量を冊子を読む時間によりコントロールした。分析の結果、冊子を読む時間が長いほど、またSOGS得点が高いほど賭けた枚数が多く、試合数に関しては情報量高群の方が賭けた試合が多いという影響が見られた。予期後悔の程度については条件間の差は見られなかったが、相関係数を求めたところ、「賭けておけばよかった」と賭けずに後悔することを考えた程度が高いほど、賭けた箇所や試合数が多いという相関が見られた。 第二の実験は予想を立てて、実際に賭けないことが予期後悔を生じやすいのではないかという仮説の元に、実際のサッカーJリーグの試合を予想してもらった。1回目の予想において、予想のみ立てる群(予想のみ条件)、1つの組み合わせのみ賭けることができる群(限定賭け条件)、賭け金の範囲内で好きなだけ組み合わせを賭ける群(自由賭け条件)を設けて、2試合目(約1週間後)には好きなだけ組み合わせを賭けてもらった。2試合目を比較したところ有意な差は見られなかったが、仮説とは逆に予想のみ条件が、2試合目で賭けた金額が一番小さく、限定賭け条件、自由賭け条件の順に賭け金は増えていた。また賭けた組み合わせの数も自由賭け条件が最も多かった。条件間の予期後悔の程度に違いは見られなかったが、「賭けておけばよかった」と予期後悔が生じた程度が高いほど、賭けた組み合わせの数が多いという弱い相関が見られた。またギャンブル依存の程度により、これらの結果に差は見られなかった。
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