研究課題/領域番号 |
15K04052
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐藤 喜一 九州大学, 基幹教育院, 教授 (00300517)
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研究分担者 |
柴山 直 東北大学, 教育学研究科, 教授 (70240752)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教育系心理学 / 古典的テスト理論 / 対応づけ / 対応づけ可能性 / 信頼性 |
研究実績の概要 |
統計的な手法により,テストX, Yの得点に何らかの対応関係をもたせることを対応づけ(linking)という.対応づけすると,テストX, Yの得点を結びつける情報―たとえば,テストXの80点がテストYの85点に相当するなど―が得られる.その際,意味ある対応づけを保証するには,さまざまな観点から対応づけ可能性(linkability, feasibility of linking)を吟味する必要がある.その中でも,テストの信頼性が十分に高いことは対応づけ結果の正しい解釈のために重要な要素の一つである.
これまで,対応づけ可能性分析においては,テストの信頼性として個々のテストの信頼性が評価されるのが常であった.しかしながら,対応づけを伴うテストの場合,私たちの関心の多くは共通尺度における受験者の得点,すなわち対応づけ得点にある.それにもかかわらず,対応づけ得点の信頼性については現在まで十分な議論がなく,テスト得点を線形変換すると信頼性係数はどう変化するかに議論が留まっている.本研究の目的は,対応づけ得点の信頼性という新たな視点を対応づけ可能性分析に導入することである.
平成28年度には,対応づけ得点の信頼性評価において最も利用価値が高いと考えられる「対応づけ得点の信頼性係数」を定式化した.さらに,その指標が対応づけ得点の信頼性不足の検出に利用できるため,対応づけ可能性のネガティブチェックに応用できることを例示した.このネガティブチェックにより,対応づけの濫用を防ぐ効果が期待できる.これらの研究成果の一部を日本テスト学会第14回大会において発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,対応づけ得点の信頼性という新たな視点を対応づけ可能性分析に導入することである.平成28年度の主たる成果は,対応づけ得点の信頼性評価において中心的な指標となる「対応づけ得点の信頼性係数」を定式化したことである.その作業に時間を要したため,成果の発表は国内の学会発表に留まっているものの,本研究は着実に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,前年度までの成果を論文としてまとめることが第一目標である.研究分担者と十分に連携の上,適切な学会誌に論文を投稿することを目指す.また,最新の関連研究の情報収集に努めるとともに,定式化した指標による対応づけ可能性分析の結果を蓄積し,日本テスト学会等での研究発表を計画している.
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次年度使用額が生じた理由 |
「対応づけ得点の信頼性係数」の定式化に時間を要したため,研究計画を修正する必要があった.主として,論文等の翻訳・校正費用を繰り越すことになった.
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次年度使用額の使用計画 |
書籍の購入,研究発表および情報収集のための旅費,論文等の翻訳・校正の費用,ソフトウェアの更新料などに活用する予定である.
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